東洋医学概論

第5章 弁証論治 第1節 弁証 Ⅰ.弁証方法  1)八綱弁証

八綱とは…

・表裏
・寒熱
・虚実
・陰陽

の4対8つのものを指します。
臨床所見が複雑であっても、必ずこの4対の証候に分けられます。

 

1.表裏とは…

病証がどこに存在するのかという「病位」が分かります。

1)表証

外邪が体表にある状態です。

〈証候分析〉

発熱、悪寒、悪風、頭痛、項強、身体痛
舌苔薄白、脈浮

 

2)裏証

外邪が体の深部に入り込んでいる状態です。

〈証候分析〉

病位は広範囲で症状も様々です。
脈沈

 

2.寒熱

病証の性質、つまり「病性」を判断します。
寒証と熱証は人体の陰陽の状態を反映したもので、陰盛(実寒)や陽虚(虚寒)の偏重を引き起こします。

1)寒証

寒邪を受けたり、陽気の不足によって現れます。

〈証候分析〉

寒がり、温まるのを好みます。
顔面蒼白、四肢の冷え、痰や涎などは水様性。
小便清長、大便は水様性or泥状。
舌は淡、舌苔は白・潤滑
脈は遅や緊

 

2)熱証

熱邪の感受や陰液不足により虚熱が発生し、身体の機能活動が亢進して現れる証候です。

〈証候分析〉

熱がりで冷えるのを好みます。
口渇があり、冷たい物を飲みたがります。
顔面紅潮、目の充血(目赤)、小便短赤、大便燥結
痰や鼻汁は黄色く粘調
吐血、衄血
舌は紅
舌苔は黄色で乾いている
脈は数

 

3.虚実

正気と邪気の盛衰の状態、つまり「病勢」を診ます。
正気不足は虚証として現れ、邪気が盛んであれば実証として現れます。

1)虚証

正気が虚弱なために現れる病理的な状態を総称したものです。
虚証とは、陰・陽・気・血・津液・臓腑のそれぞれの異なる虚の状態を包括しています。

〈証候分析〉

・陽虚の場合
陽虚によって温煦作用が低下し…
「面色淡白」「四肢の冷え」「寒がり」

原気の衰退により…
「精神不振」「無力感」

陽虚によって固摂作用が低下し…
「自汗」

舌は淡、胖大
脈は虚沈遅

・陰虚の場合…
陰液が虚して陽盛となって虚熱が生じるため…
「五心煩熱」

陰虚によって虚熱が炎上するため…
「頬部の紅潮」「口や咽頭の乾燥」

陰虚による内熱の現れで…
「盗汗」「潮熱」

舌は紅、苔少
脈は虚細数

 

2)実証

邪気の感受や体内の病理産物(瘀血や痰湿)によって起こる、病理的な状態。

〈証候分析〉

実邪が心を侵し、心神を乱すので…
「煩躁」「意識不明」

実邪が肺を侵し、宣発粛降が失調し…
「胸悶」「呼吸が荒い」

実邪が胃を侵し、腑気が通じなくなり…
「腹脹」「腹痛」「大便秘結」

水湿が体内で停まってしまい、気化が失調して…
「小便不利」

邪気と正気がぶつかりあって、血脈に影響して…
「脈実有力」

 

4.陰陽

八綱弁証を総括するもの。疾病の病理の性質に基いて、陰陽に分類して鑑別します。

1)陰証

裏証、寒証、虚証が含まれます。

〈証候分析〉

虚証によって…
「面色暗淡」「倦怠感」など

寒証によって…
「寒がり」「四肢の冷え」「口淡不渇」「小便清長」

虚or虚寒によって…
「舌淡胖嫩」「脈沈遅・弱・細濇」

 

2)陽証

表証、熱証、実証を含みます。

〈証候分析〉

熱証によって…
「発熱」「躁動」「口渇」「口乾」
※躁動とは騒ぐこと

実証によって…
「語勢が荒い」「大便秘結」

実熱によって…
「舌質紅絳」「舌苔黄黒」「舌形芒刺」
「脈浮数・洪大・滑実」