東洋医学概論

東洋医学概論 第3節 問診 Ⅳ.その他の問診事項

1)身体各部位の症状

A.五官

(1)目:肝の開竅するところ

a.目赤

目が充血し、赤いもの。

<原因>

熱証

 

b.目昏

目のかすみや視力減退のこと

<原因>

精血不足

 

c.目の痒み
<原因>

風邪の侵襲や血虚による内風

 

d.目渋

目の乾燥感や異物感があるもの。

<原因>

血虚、熱邪による陰液の損傷

 

(2)舌、口:心・脾の開竅するところ

a.口淡

食べても味がしないもの

<原因>

脾気虚(脾虚不運)

 

b.口酸

口の中に酸味を自覚するもの。

<原因>

食滞、肝脾不和、肝胃不和。

 

c.口苦

口の中に苦味を自覚するもの。

<原因>

熱証、特に肝胆湿熱。

 

d.口甜(こうてん)

口の中に甘みを自覚し、粘るもの。

<原因>

脾胃湿熱

 

(3)鼻:肺の開竅するところ

a.鼻閉

鼻づまりのこと

<原因>

急性は外感病
慢性は肺気虚

 

b.涕

鼻汁のこと

<原因>

黄色で粘稠度の高いものは熱証
色が薄く透明で水っぽいものは寒証
色が薄く透明で粘るものは痰湿

 

c.衄血(じくけつ)

鼻血のこと。

<原因>

外傷によるものでない場合は熱証

 

(4)耳:腎の開竅するところ

a.耳聾(じろう)

難聴のこと。

<原因>

急性は、実証、風熱、風寒、肝火、痰湿
徐々に起こったものは虚証、腎精不足

 

b.耳鳴
<原因>

急性のものや音が大きいものは実証
徐々に起こったものや音の小さいものは虚証

 

B.頭部

(1)頭重感

頭が重い感覚があるもの。

<原因>

湿邪、痰湿

 

(2)眩暈

目眩(目がかすんで暗転するもの)と頭暈(頭がぐるぐる回るもの)を合わせたもの。
めまいのこと。

<原因>

内風、腎精不足、昇清の失調、痰湿

 

C.咽喉部

咳嗽や◯◯などを確認する

(1)喉のつまり感・閉塞感

<原因>

気滞や痰湿
喀痰によって軽減するものは痰湿

 

梅核気

梅の種が詰まっているような異物感があるが、吐こうとしても吐き出せず、飲み込もうとしても飲み込めないもの

<原因>

気滞と痰湿が咽喉部に結した際に見られる

 

(2)喀血

呼吸器系からの出血(鮮紅色)。血塊や鮮血を喀出するもの。

<原因>

肺熱、陰虚火旺。

※吐血

消化器系からの出血(暗紅色、珈琲残渣様)

 

D.胸部

(1)心悸・怔忡

動悸のこと。怔忡は心悸がひどくなったもの。

<原因>

心の病変

(2)胸悶

胸苦しさのこと

<原因>

心・肺の気機の失調

 

E.腹部

(1)腹満

膨満感、腸満感があるが、外見的にはそれほど張りは認められないもの。

<原因>

脾胃の病変

(2)嘈雑

胸やけのこと

<原因>

胃の病変

(3)悪心

気分が悪く吐き気があるが、嘔吐できないもの

<原因>

胃の病変

 

F.全身症状

(1)倦怠感・疲労感

休養によっても改善されない。慢性的で少し動いただけでも起こるもの。

<原因>

気血両虚

(2)身重感

重だるさ

<原因>

湿邪を感受したり、脾・肺・腎の機能が失調して痰湿が停滞したもの。

(3)浮腫

外邪や脾・肺・腎の失調により津液の代謝が悪いもの。

<原因>

痰湿の停滞

 

2)汗

汗は津液が陽気によって気化され体表から出たもの。
発汗量の調節は、衛気の働きにより腠理の開闔が調節されて行われる。

発汗すべき時に出ないものや、発汗しすぎるものは異常。日頃から汗をかきやすいものは熱証や気虚、汗をかきにくいものは寒証に属する。

A.表証の汗

(1)表虚証の汗

衛気の虚衰により、腠理の開闔がうまく機能せず有汗となる。

(2)表実証の汗

風寒邪の侵襲による表実寒証では、寒邪の収引性により腠理が閉じ無汗となる。その際は、悪寒が強く、発熱は軽い、脈浮緊などの症候を伴う。

風熱邪の侵襲による表実熱証では、開泄性・炎上性により腠理が開き有汗となる。その際は、悪寒が軽く発熱が強い、脈浮数などの症候を伴う。

悪寒・戦慄の後に見られる全身性の発汗を「戦汗」といい、外感病で正気と邪気が争っている時期にみられる。

 

 

B.裏証の汗

(1)全身の汗

a.自汗

汗をかきやすく、少し動いただけで一層に発汗するもの。じわじわ発汗し、なかなかひかない。

<原因>

気虚、陽虚

b.盗汗

寝汗のこと。

<原因>

陰虚

c.大汗

汗が大量に出ること。
※症状が重篤で大量の汗が出ることを、絶汗・脱汗という。

<原因>

実熱

(2)局所の汗

a.頭顔面部の汗

頭汗という。

<原因>

上焦の邪熱、湿熱

b.手足の汗

手足心汗という。

<原因>

発汗が多いものは、陰経の鬱熱、陰虚、脾胃湿熱

c.半身の汗

患側が無汗となる。

<原因>

気血の運行が失調することにより起こる。

 

3)疼痛

A.部位

(1)頭痛

手足の三陽経、足の厥陰肝経、督脈が流注する。
これらの経気の不足、外邪や瘀血などにより障害され頭痛が起こる。

 

(2)胸痛

胸中には心・肺があり、これが病むと胸痛が起こりやすい。
膻中を中心とした痛みで動悸を伴うものは「
正中より外側で咳嗽などを伴うものは「

(3)脇痛

胸肋部には「足の厥陰肝経」「足の少陽胆経」が流注する。
肝・胆の病変によるものが多い。
胸脇苦満

(4)腹痛

大腹、小腹、少腹に分けられる。
大腹部で中脘を中心にした範囲を胃脘部という。

 

(5)頚部痛

前頸部:陽明経

即頸部:少陽経

後頸部:太陽経

(6)背痛

足の太陽膀胱経が流注し、気血の滞りによるものが多い。
背部から後頸部にかけての強張り、悪寒を伴うものは風寒邪の侵襲が多い。

(7)腰痛

腰はの府(集まっている)であり、の病変によるものが多い。
・足の少陰腎経
・足の太陽膀胱経
・督脈
・帯脈
が流注し、これらの経脈の気血不足や瘀血などによって起こるものが多い。

前後屈に伴う痛みは、
・足の太陽膀胱経
・督脈

回旋に伴う痛みは、
・足の少陽胆経

(8)肩痛

手の太陰肺経、手の三陽経が流注し、これらの経脈の滞りや経筋の病証を示す。

肩前面は、
・手の太陰肺経
・手の陽明大腸経

側面は
・手の少陽三焦経

後面は
・手の太陽小腸経

(9)四肢痛

筋・肌肉を主る「肝」「脾」と関連が深い。
十二経脈はすべての四肢を循行し、気血の流れが滞ると痛みが起こる。

B.性質

 

C.程度

痛みが強いもの:実証
痛みが弱いもの:虚証

D.特徴

 

4)女性

「素問:上古天真論篇」女性は7の倍数で体質変化

A.月経

(1)月経周期

a.経早(けいそう)(月経先期)

「頻発月経」のこと。

<原因>

気虚による固摂作用の低下
疏泄の太過による血行の亢進
による動血

b.経遅(月経後期)

稀発月経」のこと。

<原因>

血虚により任脈・衝脈が満たされない。
寒凝血瘀、気滞血瘀などにより任脈・衝脈が障害されるもの

※経閉

無月経のこと。3ヶ月以上月経が停止しているもの。

c.経乱(前後不定期)

月経周期が早まったり遅れたり、安定せずに乱れるもの。

<原因>

肝鬱による気機の失調
脾腎両虚

d.崩漏

不正性器出血のこと。
月経時でないのに突然大量に性器出血するものを「
少量の出血が続いて止まらないものを「
合併しやすいので「崩漏

<原因>

気虚による固摂作用の低下
による動血など

(2)月経血の量

a.月経過多

経血が通常よりも多いもの。

<原因>

気虚による固摂作用の低下
疏泄の大過による血行の亢進
による動血

b.月経過少

経血が通常よりも少ないもの。

<原因>

血虚により任脈、衝脈が満たされない。
寒凝血瘀気滞血瘀などにより任脈、衝脈が傷害される。

 

(3)月経血の色・質

通常の色はやや暗い紅色
普通の血液よりも少し濃い
粘稠度がある
血塊や異臭はない

<原因>

色が淡紅色で薄く水っぽいもの:気血不足
深紅色で粘稠質なもの:熱証
血塊が混じるもの:瘀血
色が紫暗色:寒凝血瘀
暗紅色のもの:気滞血瘀

 

(4)月経痛(経痛)

月経中や前後に下腹部(小腹部、少腹部)、腰部に痛みが起こるもの。不通則痛、不栄則痛といった機序で起こる。

月経前から月経中にかけての痛み。出血後に痛みが軽減するもの

<原因>

実証

 

月経中から月経後にかけての痛み。出血後にだるさが伴うもの

<原因>

虚証

B.帯下(たいげ)

膣から分泌される少量の無色透明、無臭の粘液のこと。「おりもの」、「こしけ」とも言う。

量が多く、水っぽいもの
<原因>

痰湿、陽虚

白く、粘稠なもの
<原因>

痰湿

黄色っぽく、粘液で、臭いがあるもの
<原因>

湿熱

C.妊娠、出産

胎児に気血を注ぐため、産後に虚証となる場合がある。

 

5)既往歴

手術

気血の損傷、瘀血が生じる原因となる。

服用中の薬

血液凝固を阻害するもの(血液をサラサラにするもの)や、免疫力の低下を起こすものの使用中は、鍼灸治療を注意する。

漢方薬

6)家族歴

7)小児