1)身体各部位の症状
A.五官
木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
目 | 舌 | 口 | 鼻 | 耳 |
(1)目:肝の開竅するところ
a.目赤
目が充血し、赤いもの。
<原因>
熱証
b.目昏
目のかすみや視力減退のこと
<原因>
精血不足
c.目の痒み
<原因>
風邪の侵襲や血虚による内風
d.目渋
目の乾燥感や異物感があるもの。
<原因>
血虚、熱邪による陰液の損傷
(2)舌、口:心・脾の開竅するところ
a.口淡
食べても味がしないもの
<原因>
脾気虚(脾虚不運)
b.口酸
口の中に酸味を自覚するもの。
<原因>
食滞、肝脾不和、肝胃不和。
c.口苦
口の中に苦味を自覚するもの。
<原因>
熱証、特に肝胆湿熱。
d.口甜(こうてん)
口の中に甘みを自覚し、粘るもの。
<原因>
脾胃湿熱。
(3)鼻:肺の開竅するところ
a.鼻閉
鼻づまりのこと
<原因>
急性は外感病
慢性は肺気虚
b.涕
鼻汁のこと
<原因>
黄色で粘稠度の高いものは熱証
色が薄く透明で水っぽいものは寒証
色が薄く透明で粘るものは痰湿
c.衄血(じくけつ)
鼻血のこと。
<原因>
外傷によるものでない場合は熱証
(4)耳:腎の開竅するところ
a.耳聾(じろう)
難聴のこと。
<原因>
急性は、実証、風熱、風寒、肝火、痰湿
徐々に起こったものは虚証、腎精不足
b.耳鳴
<原因>
急性のものや音が大きいものは実証。
徐々に起こったものや音の小さいものは虚証。
B.頭部
(1)頭重感
頭が重い感覚があるもの。
<原因>
湿邪、痰湿
(2)眩暈
目眩(目がかすんで暗転するもの)と頭暈(頭がぐるぐる回るもの)を合わせたもの。
めまいのこと。
<原因>
内風、腎精不足、昇清の失調、痰湿
C.咽喉部
咳嗽や◯◯などを確認する
(1)喉のつまり感・閉塞感
<原因>
気滞や痰湿。
喀痰によって軽減するものは痰湿。
梅核気
梅の種が詰まっているような異物感があるが、吐こうとしても吐き出せず、飲み込もうとしても飲み込めないもの
<原因>
気滞と痰湿が咽喉部に結した際に見られる
(2)喀血
呼吸器系からの出血(鮮紅色)。血塊や鮮血を喀出するもの。
<原因>
肺熱、陰虚火旺。
※吐血
消化器系からの出血(暗紅色、珈琲残渣様)
D.胸部
(1)心悸・怔忡
動悸のこと。怔忡は心悸がひどくなったもの。
<原因>
心の病変
(2)胸悶
胸苦しさのこと
<原因>
心・肺の気機の失調
E.腹部
(1)腹満
膨満感、腸満感があるが、外見的にはそれほど張りは認められないもの。
<原因>
脾胃の病変
(2)嘈雑
胸やけのこと
<原因>
胃の病変
(3)悪心
気分が悪く吐き気があるが、嘔吐できないもの
<原因>
胃の病変
F.全身症状
(1)倦怠感・疲労感
休養によっても改善されない。慢性的で少し動いただけでも起こるもの。
<原因>
気血両虚
(2)身重感
重だるさ
<原因>
湿邪を感受したり、脾・肺・腎の機能が失調して痰湿が停滞したもの。
(3)浮腫
外邪や脾・肺・腎の失調により津液の代謝が悪いもの。
<原因>
痰湿の停滞
2)汗
汗は津液が陽気によって気化され体表から出たもの。
発汗量の調節は、衛気の働きにより腠理の開闔が調節されて行われる。
発汗すべき時に出ないものや、発汗しすぎるものは異常。日頃から汗をかきやすいものは熱証や気虚、汗をかきにくいものは寒証に属する。
A.表証の汗
(1)表虚証の汗
衛気の虚衰により、腠理の開闔がうまく機能せず有汗となる。
(2)表実証の汗
風寒邪の侵襲による表実寒証では、寒邪の収引性により腠理が閉じ無汗となる。その際は、悪寒が強く、発熱は軽い、脈浮緊などの症候を伴う。
風熱邪の侵襲による表実熱証では、開泄性・炎上性により腠理が開き有汗となる。その際は、悪寒が軽く発熱が強い、脈浮数などの症候を伴う。
悪寒・戦慄の後に見られる全身性の発汗を「戦汗」といい、外感病で正気と邪気が争っている時期にみられる。
B.裏証の汗
(1)全身の汗
a.自汗
汗をかきやすく、少し動いただけで一層に発汗するもの。じわじわ発汗し、なかなかひかない。
<原因>
気虚、陽虚。
b.盗汗
寝汗のこと。
<原因>
陰虚
c.大汗
汗が大量に出ること。
※症状が重篤で大量の汗が出ることを、絶汗・脱汗という。
<原因>
実熱
(2)局所の汗
a.頭顔面部の汗
頭汗という。
<原因>
上焦の邪熱、湿熱
b.手足の汗
手足心汗という。
<原因>
発汗が多いものは、陰経の鬱熱、陰虚、脾胃湿熱
c.半身の汗
患側が無汗となる。
<原因>
気血の運行が失調することにより起こる。
3)疼痛
A.部位
(1)頭痛
手足の三陽経、足の厥陰肝経、督脈が流注する。
これらの経気の不足、外邪や瘀血などにより障害され頭痛が起こる。
![](https://i0.wp.com/healers-diary.com/wp-content/uploads/2017/07/スクリーンショット-2017-07-29-1.23.26.png?resize=1548%2C678&ssl=1)
(2)胸痛
胸中には心・肺があり、これが病むと胸痛が起こりやすい。
膻中を中心とした痛みで動悸を伴うものは「心」
正中より外側で咳嗽などを伴うものは「肺」
(3)脇痛
胸肋部には「足の厥陰肝経」「足の少陽胆経」が流注する。
肝・胆の病変によるものが多い。
胸脇苦満
(4)腹痛
大腹、小腹、少腹に分けられる。
大腹部で中脘を中心にした範囲を胃脘部という。
![](https://i1.wp.com/healers-diary.com/wp-content/uploads/2017/07/スクリーンショット-2017-07-30-15.51.52.png?resize=1040%2C640&ssl=1)
(5)頚部痛
前頸部:陽明経
即頸部:少陽経
後頸部:太陽経
(6)背痛
足の太陽膀胱経が流注し、気血の滞りによるものが多い。
背部から後頸部にかけての強張り、悪寒を伴うものは風寒邪の侵襲が多い。
(7)腰痛
腰は腎の府(集まっている)であり、腎の病変によるものが多い。
・足の少陰腎経
・足の太陽膀胱経
・督脈
・帯脈
が流注し、これらの経脈の気血不足や瘀血などによって起こるものが多い。
前後屈に伴う痛みは、
・足の太陽膀胱経
・督脈
回旋に伴う痛みは、
・足の少陽胆経
(8)肩痛
手の太陰肺経、手の三陽経が流注し、これらの経脈の滞りや経筋の病証を示す。
肩前面は、
・手の太陰肺経
・手の陽明大腸経
側面は
・手の少陽三焦経
後面は
・手の太陽小腸経
(9)四肢痛
筋・肌肉を主る「肝」「脾」と関連が深い。
十二経脈はすべての四肢を循行し、気血の流れが滞ると痛みが起こる。
B.性質
![](https://i2.wp.com/healers-diary.com/wp-content/uploads/2017/07/スクリーンショット-2017-09-07-20.49.14.png?resize=1386%2C942&ssl=1)
C.程度
痛みが強いもの:実証
痛みが弱いもの:虚証
D.特徴
![](https://i0.wp.com/healers-diary.com/wp-content/uploads/2017/07/スクリーンショット-2017-09-07-20.58.33.png?resize=1098%2C408&ssl=1)
4)女性
「素問:上古天真論篇」女性は7の倍数で体質変化
A.月経
(1)月経周期
a.経早(けいそう)(月経先期)
「頻発月経」のこと。
<原因>
気虚による固摂作用の低下
疏泄の太過による血行の亢進
熱による動血
b.経遅(月経後期)
「稀発月経」のこと。
<原因>
血虚により任脈・衝脈が満たされない。
寒凝血瘀、気滞血瘀などにより任脈・衝脈が障害されるもの
※経閉
無月経のこと。3ヶ月以上月経が停止しているもの。
c.経乱(前後不定期)
月経周期が早まったり遅れたり、安定せずに乱れるもの。
<原因>
肝鬱による気機の失調
脾腎両虚
d.崩漏
不正性器出血のこと。
月経時でないのに突然大量に性器出血するものを「崩」
少量の出血が続いて止まらないものを「漏」
合併しやすいので「崩漏」
<原因>
気虚による固摂作用の低下
熱による動血など
(2)月経血の量
a.月経過多
経血が通常よりも多いもの。
<原因>
気虚による固摂作用の低下
疏泄の大過による血行の亢進
熱による動血
b.月経過少
経血が通常よりも少ないもの。
<原因>
血虚により任脈、衝脈が満たされない。
寒凝血瘀や気滞血瘀などにより任脈、衝脈が傷害される。
(3)月経血の色・質
通常の色はやや暗い紅色
普通の血液よりも少し濃い
粘稠度がある
血塊や異臭はない
<原因>
色が淡紅色で薄く水っぽいもの:気血不足
深紅色で粘稠質なもの:熱証
血塊が混じるもの:瘀血
色が紫暗色:寒凝血瘀
暗紅色のもの:気滞血瘀
(4)月経痛(経痛)
月経中や前後に下腹部(小腹部、少腹部)、腰部に痛みが起こるもの。不通則痛、不栄則痛といった機序で起こる。
月経前から月経中にかけての痛み。出血後に痛みが軽減するもの
<原因>
実証
月経中から月経後にかけての痛み。出血後にだるさが伴うもの
<原因>
虚証
B.帯下(たいげ)
膣から分泌される少量の無色透明、無臭の粘液のこと。「おりもの」、「こしけ」とも言う。
量が多く、水っぽいもの
<原因>
痰湿、陽虚
白く、粘稠なもの
<原因>
痰湿
黄色っぽく、粘液で、臭いがあるもの
<原因>
湿熱
C.妊娠、出産
胎児に気血を注ぐため、産後に虚証となる場合がある。
5)既往歴
手術
気血の損傷、瘀血が生じる原因となる。
服用中の薬
血液凝固を阻害するもの(血液をサラサラにするもの)や、免疫力の低下を起こすものの使用中は、鍼灸治療を注意する。
漢方薬
6)家族歴
7)小児