古典読解

温病条弁(温病条辨)より

〜読み方〜

陽明温病下之不通
其証有五

陽明温病は之を下すも通ぜず
その証は五つ有り

応下失下正虚不能運薬
不運薬者死
新加黄龍湯主之

下すべくも下(焦)を失い正(気)虚し運薬を能わず
運薬せざるは死す
新加黄龍湯は之を主る

喘促不寧痰涎よう滞
右寸実大、肺気不降者
宣白承気湯主之

喘が促り寧かならず、痰涎よう滞
右寸が実大 、肺気が降りざるは、
宣白承気湯が之を主る
※促る=せまる、寧か=やすらか

左尺牢堅、小便赤痛、時煩渇甚、
導赤承気湯主之

左尺が牢堅で、小便が赤く痛み、煩渇甚だしき時は、
導赤承気湯が之を主る

邪閉心包神昏舌短
内竅不通飲不解渇者
牛黄承気湯主之

邪が心包を閉ざし、神昏し舌短、
内竅は通ぜず、飲むも渇き解せざるは、
牛黄承気湯が之を主る

津液不足無水舟停者
間服増液再不下者
増液承気湯主之

津液が不足し、水を無くして舟が停まるは、
間増液を服すも、再も下せざるは
増液承気湯が之を主る
※間=しばらく、再も=なおも

〜北川が学んだことと解釈〜

陽明温病には下法をしても治らないものがあって、そういった証は5つあります。

1.下法をしても下?を失い、正気を虚して薬の効き目のでない場合
薬の効き目が出ない人は死んでしまいます。
そういった時は「新加黄龍湯」が効きます。

2.ぜいぜい咳き込んで、安らかでない時、痰や涎が出ている場合で、右寸(肺)の脈が実大脈、肺気が降りない場合は、「宣白承気湯」が効きます。

3.左尺(腎)の脈が牢堅脈で、小便が赤く痛み、煩渇がひどい時は、「導赤承気湯」が効きます。

4.邪が心包を閉ざして、神昏し舌が短の時、内竅が通っておらず、飲み物を飲んでも渇きが癒えない場合は、「牛黄承気湯」が効きます。

5.津液が不足して、水が無くなり舟(便)が留まり、しばらく増液湯を飲んでも治らない場合は、「増液承気湯」が効きます

陽明温病では、「熱結」つまり体内の熱が過剰になって便が出ない状態になります。

胃気は「心陽」や「二陽」とも呼ばれます。
「二陽は陽明経」なので、胃と大腸
ちなみに
「一陽は少陽経」なので、三焦と胆
「三陽は太陽経」なので、小腸と膀胱

なぜ、陽明温病(熱の証)なのに、牢脈という実寒の症状が出るのか?
これは陽明経に熱があるので、腎は冷えてしまっているからです。

胃の熱が心包に行くのは逆伝で、肺に行くのは順伝の状態です。