東洋医学概論

第5章 弁証論治 第1節 弁証 Ⅰ.弁証方法  4)経絡弁証

体表の経絡および、それが所属する臓腑に関連する所見に基いて、病証がどの経絡(臓腑)にあるのかを分析し弁別する方法です。

外邪が人体に侵襲すると経気を巡らせる働きが乱れてしまい、外邪は経絡を通じて臓腑に入っていきます。
また、臓腑の病変が経絡を通じて体表に反映されることもあります。

1.十二経脈弁証

1)手の太陰肺経

〈経脈〉

上肢前面外側の痛み、手掌のほてり

〈関連〉

咳嗽、息切れ、胸苦しさ、胸の熱感

 

2)手の陽明大腸経

〈経脈〉

喉の腫れや痛み、上肢外側の痛み、示指の痛み

〈関連〉

歯の痛み、衄血

 

3)足の陽明胃経

〈経脈〉

顔面の麻痺、前頸部の腫れ、前胸部、腹部、鼠径部、下肢前面、足背の痛み

〈関連〉

躁状態、鬱状態、衄血、消化吸収の異常、歯痛(上歯)

 

4)足の太陰脾経

〈経脈〉

前胸部、心下部、腋窩の圧迫感、下肢内側の腫れや痛み、母趾の麻痺

〈関連〉

腹部膨満感、嘔吐、軟便、下痢、全身の倦怠感

 

5)手の少陰心経

〈経脈〉

心臓部痛、上肢前面内側の痛み、手掌のほてりと痛み

〈関連〉

のどの渇き、脇の痛み

 

6)手の太陽小腸経

〈経脈〉

頚が腫れる。後ろを振り返ることができない。上肢の激しい痛み。頚、肩、上肢後面内側の痛み

〈関連〉

のど、あごの腫れや痛み、難聴、耳鳴り
※聴宮がある

 

7)足の太陽膀胱経

〈経脈〉

頭頂部、後頭部痛、体幹後面、下肢後面の痛み、小趾の麻痺

〈関連〉

脊柱の痛み、目の痛み、衄血、痔、精神異常

 

8)足の少陰腎経

〈経脈〉

腰部・大腿内側の痛み、冷え、痺れ、足底のほてり、口腔内、咽頭部の炎症

〈関連〉

空腹感があるが食欲がない。顔色が黒ずむ。呼吸が苦しく咳き込む。血痰。立ちくらみ。寝ることを好んで起きたがらない。心配性でビクビクする。

 

9)手の厥陰心包経

〈経脈〉

心臓部痛。腋の腫れ。上肢の引きつり。手掌のほてり。季肋部のつかえ。

〈関連〉

胸苦しさ。顔色が赤い。精神不安定。

 

10)手の少陽三焦経

〈経脈〉

耳後〜肩上部〜上肢後面の痛み。第4指の麻痺。目尻からの頬の痛み。難聴。

〈関連〉

咽頭。喉頭の痛み。汗。

 

11)足の少陽胆経

〈経脈〉

目尻、側頭部、顎関節、鎖骨上窩、体幹外側、下肢外側の痛み、第4趾の麻痺、寝返りがうてない、足が外反しほてる。

〈関連〉

口苦、溜息、顔がくすむ、カサカサして艶がない、頸部のリンパ節結核

 

12)足の厥陰肝経

〈経脈〉

疝気、下腹部膨満感、遺尿、尿閉、腰痛、うつむいたり仰向けができない、季肋部の痛み

〈関連〉

嘔吐、ひどい下痢、のどの渇き、顔色がすすけて青黒くなる

 

2.奇経八脈弁証

1)督脈

主穴:後渓
従穴:申脈

背骨の強張り、頭痛、足の冷え、痛み、下腹部から胸まで突き上げる痛み、心臓部痛、むくみ、水腫、遺尿、不妊

 

2)任脈

主穴:列欠
従穴:照海

疝気(下腹部痛)、帯下、月経異常、腹部皮膚の痛みや痒み

 

3)衝脈

主穴:公孫
従穴:内関

逆気(悪心、嘔吐、めまい、頭痛)、下痢

 

4)帯脈

主穴:足臨泣
従穴:外関

腹張。腰は水中に座っているときのように冷えたり、フワフワしてすわりが悪い。

 

5)陽蹻脈

主穴:申脈
従穴:後渓

陰が緩んで陽がひきつる。
(下肢内側の麻痺、前半身が緩む、後半身がひきつる。)
目が痛む。

 

6)陰蹻脈

主穴:照海
従穴:列欠

陽が緩んで陰がひきつる
(下肢外側の麻痺。後半身が緩み、前半身がひきつる)

 

7)陽維脈

主穴:内関
従穴:公孫

寒熱に苦しむ。

 

8)陰維脈

主穴:外関
従穴:足臨泣

心臓部痛に苦しむ