東洋医学臨床論

10)咳嗽 についてのまとめ/東洋医学臨床論

咳嗽とは…

咳嗽は「肺」の病証の主要症状の1つです。
肺の「通調水道」という機能と「水の上源」という性質が低下することによって痰湿ができます。

「咳」とは肺気上逆によって音が出るもので、「嗽」とは痰を吐き出すものです。

痰を伴わない咳嗽を「乾性咳嗽」
痰を伴う咳嗽を「湿性咳嗽」
といいます。

 

咳嗽の分類

急性で起こるものを「外感性咳嗽」
慢性的なものを「内傷性咳嗽」
といいます。

外感性のものは「風寒」と「風熱」が原因になります。

内傷性のものは「痰湿」「肝火」、「肺腎陰虚」が原因になります。

 

1.外感性咳嗽

「風寒」と「風熱」が外感性咳嗽の原因になります。

1)風寒

風寒が肺を犯すと、肺の宣発機能が失調します。
それによって肺気が上逆して咳嗽が起こります。

【症状】
  • 咳嗽、喉の痒み
  • 痰湿は薄く白い
  • 鼻淵、薄い鼻汁
    ※鼻淵:蓄膿症
  • 頭痛、四肢のだるさ、悪寒発熱、無汗
【舌脈】

脈:浮緊

 

2)風熱

風熱が肺を犯し、それによって肺の粛降機能が失調します。
肺気が上逆することで咳嗽が起こります。

【症状】
  • 咳嗽が多く、比較的激しい
  • 息が荒く、声がかすれる
  • 喉は乾き、痛い
  • 痰は粘ちょうで黄色い
  • 鼻淵、黄色鼻汁
  • 頭痛、四肢のだるさ
  • 発熱悪寒
【舌脈】
  • 舌苔:薄黄
  • 脈:浮数

 

2.内傷性咳嗽

「痰湿」「肝火」「肺腎陰虚」が内傷性咳嗽の原因になります。

1)痰湿

脾の運化機能が低下することによって痰湿ができます。
その痰湿が肺に影響して、肺の粛降機能が失調すると咳嗽が起こります。

【症状】
  • 咳嗽の音は低く濁っている。起床後は特に咳き込む
  • 痰は多く粘る。塊状。色は白か灰色。
  • 痰を吐き出すと咳も軽減する。
  • 倦怠感、全身のだるさ、腹部膨満、食欲不振
【舌脈】
  • 舌苔:白膩
  • 脈:濡、滑

 

2)肝火

肝鬱が悪化し化火します。その炎上性によって肺が侵されて、粛降機能が失調して咳嗽が起こります。

【症状】
  • 咳嗽
  • 痰は少なく粘っている
  • 咳をすると胸脇部が痛む
  • 顔面紅潮
  • 咽頭部の乾き、口苦
【舌脈】
  • 舌質:紅
  • 舌苔:薄黄
  • 脈:弦数

 

3)肺腎陰虚

肺陰虚によって燥が生じます。
肺が潤いを無くし、粛降機能が失調すると咳嗽が起こります。

【症状】
  • 乾いた咳
  • 痰に血が混じる喀血がでます。
  • 潮熱、盗汗
  • 五心煩熱、不眠
  • 腰膝酸軟
【舌脈】
  • 舌質:紅
  • 舌苔:少
  • 脈:細数