東洋医学臨床論

30)発熱 についてのまとめ/東洋医学臨床論

東洋医学では発熱を「外感性発熱」と「内傷性発熱」の2つに分類します。
ここでは、2つの発熱についてそれぞれの特徴などをまとめていきます。

1.外感性発熱

外感性発熱は、外邪が人の体に侵襲して来た時に、人体の正気と外邪がぶつかり合うことで起こる発熱です。

外感性発熱の分類

外感性発熱は「実証」しかありません。
基本的に六淫である「風、熱(暑・火)、湿、燥、寒」のどれでも発熱は起こるとされています。

 

1)風熱

【症状】
  • 発熱、悪風
  • 咳嗽、鼻淵、鼻汁(黄色・粘ちょう)
    ※鼻淵:蓄膿症
  • 頭痛、四肢のだるさ
【舌脈】
  • 舌苔:薄黄
  • 脈:浮数

 

2)風寒

【症状】
  • 発熱、悪寒
  • 咳嗽、鼻淵、鼻汁(白色、薄い)
  • 頭痛、四肢のだるさ、無汗
【舌脈】
  • 脈:浮遅、浮緊

 

3)湿熱 / 4)寒湿

①脾胃湿熱
【症状】
  • 身熱不揚
    ※湿邪と熱が内部に停滞しているためにみられる症状。患者自身は発熱を自覚できますが、検者は皮膚に触れても熱く感じず、しばらく触れていてようやく熱を感じる程度のもの。
  • 汗が出ても下がらない。
  • 胸腹脹満
    ※胸やお腹が張った感じがする
  • 納呆悪心
    ※少食ですぐ気持ち悪くなる
【舌脈】
  • 舌苔:黄膩苔
  • 脈:滑数

 

②大腸湿熱
【症状】
  • 発熱、腹痛
  • 泄瀉、赤白膿血便、裏急後重、肛門灼熱
  • 口の渇き、口苦
  • 尿短赤
【舌脈】
  • 舌:紅
  • 舌苔:黄膩
  • 脈:滑数

 

③膀胱湿熱
【症状】
  • 発熱(午後に顕著)
  • 頻尿、尿急、尿痛(灼痛)、小便熱黄赤
  • 腰部or小腹部の疼痛
【舌脈】
  • 舌:紅
  • 舌苔:黄膩
  • 脈:滑数

 

5)暑湿(中暑)

①軽症の場合
【症状】
  • 身熱
    ※全身的な発熱
  • 眩暈、頭痛
  • 少汗
  • 嘔吐
  • 倦怠嗜睡
【舌脈】
  • 舌苔:白膩
  • 脈:濡数
②重症の場合
【症状】
  • 壮熱
  • 無汗
  • 肌膚灼熱、面紅目赤
  • 口唇乾燥、煩渇多飲
  • 神志昏迷、痙攣
【舌脈】
  • 舌:紅少津
  • 脈:洪数
    ※洪は熱盛の時にみられる。浮いていて拍動は強くしっかり触れるが、去る時に勢いが衰える脈。

 

2.内傷性発熱

内傷性発熱の分類

実証では「肝火」「瘀血」が原因となります。

虚証では「陰虚」「血虚」「気虚」が原因となります。

 

1)肝火

【症状】
  • 発熱(基本的には微熱だが、情緒の状態によって熱勢が変化する。)
  • 精神抑鬱
  • 胸脇脹満
  • 易怒
  • 口苦
【舌脈】
  • 舌:紅
  • 舌苔:黄
  • 脈:弦数

 

2)瘀血

【症状】
  • 発熱(午後や夜間に顕著)
  • 自覚的に身体のある部分に熱を感じる
  • 口渇(飲み物は飲みたくない)
  • 固定性の刺痛or腫塊
  • は暗黒色or艶のない黄色
【舌脈】
  • 舌:青紫、瘀点瘀斑、舌下怒張
  • 脈:渋数
    ※渋脈=濇脈、流れが悪くざらざらしたもの。血瘀で診られる。

 

3)陰虚

【症状】
  • 午後or夜間の潮熱
  • 骨蒸潮熱(骨の髄から出てくるような熱)
  • 手足のほてり、口渇
  • 盗汗、心煩、不眠、多夢
  • 便秘
  • 尿短黄
【舌脈】
  • 舌:紅、少津、裂紋
  • 脈:細数

 

4)血虚

【症状】
  • 発熱(多くは微熱)
  • 眩暈、目がぼやける
  • 倦怠感、四肢のしびれ
  • 心悸、顔面蒼白、艶がない
  • 口唇や爪の色が淡白
【舌脈】
  • 脈:細弱数

 

5)気虚

①中気不足
【症状】
  • 発熱(多くは微熱)
  • 活動後に発作・悪化、倦怠感、無力感、息切れ
  • 口数が少ない
  • 自汗
  • 易感冒
  • 泥状便
【舌脈】
  • 舌:淡
  • 脈:細弱数

 

②内湿停滞
【症状】
  • 微熱
  • 午後に顕著
  • 身熱不揚
  • 脘腹膨満
  • 全身がだるい
  • 食欲不振
  • 口渇不欲飲
  • 悪心
  • 大便希薄or粘滞ですっきりしない
【舌脈】
  • 舌苔:白膩
  • 脈:濡数