神経細胞の役割は「情報を伝えること」
情報とは…
細胞膜の電気的な興奮
電気的な興奮とは…
膜電位の変化
膜電位とは…
細胞膜の内側と外側との間の電位差
※膜電位は神経細胞が刺激を受けて興奮するときに大きく変化し、軸索を伝導します。
a.静止電位
静止時(興奮が起こっていない)のニューロンの細胞内で、細胞膜を境として細胞外に対して約‐60〜−90mVの負電位を示すこと。
静止電位は細胞内外のイオン分布の相違によって形成されます。
細胞内外のイオン分布の相違とは…
細胞外にはNa+やCl−が多い
細胞内はK+やたんぱく質陰イオンが多い
細胞内の状態は?
①たんぱく質陰イオン
細胞質を形成するたんぱく質は陰イオンの性質を持ちます。
細胞膜のチャネルを通過できない大きさなので、細胞外の濃度が低くても拡散できません。よって、細胞内に負の電位が増加します。
②カリウムイオン
ナトリウムポンプによって細胞内に能動輸送されます。
※ナトリウムポンプはNa+が細胞外に能動輸送される際に、K+が細胞外から細胞内に入るので「ナトリウムカリウムポンプ」とも呼ばれます。
K+は小さいので細胞膜のチャネルを通り抜け、細胞内から細胞外へ拡散することができます。
しかし、細胞内のたんぱく質陰イオンに電気的に引き寄せられるので、細胞外から細胞内に流入することになり、結果として細胞内にK+が多い状態になります。
細胞外の状態は?
①ナトリウムイオン
ナトリウムポンプによって、細胞内から細胞外へ送り出されます。
②塩化物イオン
Na+の正電荷に引き寄せられて、細胞外へ流出します。
つまり…
ナトリウムポンプの機構のおかげで細胞内外が不均衡(負電位)で保たれます。
b.活動電位
ニューロンが興奮することで生じる電位差のこと。
大きく「脱分極」と「再分極相」に分けられる。
脱分極とは?
神経細胞の膜電位がマイナスからゼロに向かって変化することです。
ナトリウムチャネルが一斉に広がることで、Na+の膜透過性が急速に増加します。
そうすると細胞外のNa+が濃度勾配に従って細胞内に流入し、膜電位がゼロを越えて正電荷になります。
活動電位の正電位部分を「オーバーシュート」と呼びます。
脱分極が閾値を越えると、神経細胞は自動的に興奮して活動電位を発生します。
再分極相とは?
活動電位は頂点に達した後、急速に低下し再び負の静止電位に戻ります。その頂点から静止電位に戻っていく相を「再分極相」といいます。
活動電位がゼロを越えて正になるにつれて…
・K+に対する透過性が増加
・細胞内のK+が細胞外へ拡散
・細胞内の電位が負の方向へ向かう
再分極相では「後電位」と呼ばれる緩やかな電位変動があり、そこでは静止電位より低い「過分極性後電位」と、静止電位より高い「脱分極性後電位」があります。
過分極とは?
膜電位が静止電位より陰性方向に変化することをいいます。
活動電位発生中に流入したNa+と、流出したK+はナトリウムポンプによってゆっくりと元の状態に戻ります。
全か無かの法則とは?
閾値以上の興奮を起こす刺激であれば、ニューロンは刺激強度の大小に関係なく、一定の形と大きさの活動電位を発生します。
絶対不応期と相対不応期とは?
①絶対不応期とは
活動電位の上位相と下降相の大部分の期間では細胞は新たに興奮できません。
②相対不応期とは
絶対不応期終了後は活動電位を起こすための閾値が通常よりも高くなるので細胞は興奮しにくくなります。
相対不応期中は活動電位の大きさが通常よりも小さくなります。
c.興奮の伝導
1.伝導の一般的なしくみ
伝導とは…
ニューロンの膜の一部に活動電位が発生し、活動電位電位が軸索を電気信号として伝わることをいいます。
①細胞膜の一部が興奮して活動電位を発生
②その隣接部との間に電位差を生じて電流が流れる(=局所電流)
局所電流の流れる方向は?
細胞外:静止部⇒興奮部(内向き電流)
細胞内:興奮部⇒静止部(外向き電流)
これによって、隣接部の細胞膜には外向き電流が流れます。
次々と隣接部を興奮させることで、活動電位を発生させ興奮が伝導していきます。。
神経線維を活動電位が伝導する際に、次のような「3つの原則」があります。
(1)絶縁性伝導
多数の神経線維が平衡して神経線維束を作っている場合、一本の神経線維が興奮しても隣接する他の神経線維には興奮が起こりません。
(2)不減衰伝導
神経の直径やその他の性状が一様な場合、興奮の大きさ(オーバーシュート)は減衰せずに一定の大きさで伝導します。
(3)両方向性伝導
生体内のニューロンで起こる興奮は通常決まった1つの方向に伝導します。この伝導を「順行性伝導」といい、反対方向の伝導を「逆行性伝導」といいます。
2.跳躍伝導
有髄線維では無髄線維に比べて活動電位が伝導する速度はずっと速い。
〈理由〉
有髄線維ではミエリンで覆われた部分を飛び越えてランビエ絞輪の部分だけ流れるからです。
3.伝導速度
ニューロンの伝達速度は無髄線維、有髄線維のどちらでも線維の直径が大きいほど速くなります。
〈理由〉
太い繊維ほど隣接した膜に電流が流れやすく、より素早く閾値まで脱分極されるため。
※細い無髄線維:約1m/秒
※太い有髄線維:約100m/秒
4.神経線維の分類
神経線維は伝導速度の速い順にA、B、Cとし、そのA線維群をさらにα、β、γ、δの4群に分類されます。
「電気刺激に対する閾値」
A<B<C(細いほうが閾値が高い(=鈍い))
「圧迫に対する強さ」
A<B<C(太いようが弱い(=しびれやすい))
「局所麻酔薬に対する強さ」
A>B>C(細いほうが弱い(=速く効く))
感覚(求心性)線維の場合
※B線維は遠心性線維なので対応に含まれない