a.聴覚の性質
①音の高さ
音の高さを決定するのは主に周波数(Hz)です。
通常、会話の周波数は1,000〜2000Hz(200〜4,000Hz)で、大きい方が高く聞こえます。
②音の強さ
音の強さは、
・音圧(振動の振幅)を示すデシベル(dB)
・主観的な音の強さ(音圧と音の振動数)を示すホン(phon)
で表されます。
③音の局在
両耳で聞くことによって、音源の方向や位置が聞き分けられる仕組みになっています。
b.聴覚器と伝導路
(1)外耳
「耳介と外耳道」のことを外耳と言います。
外耳道は、
・外側1/3が軟骨
・内側2/3が骨
でできています。
軟骨部分には、耳道腺、毛、脂腺が存在していて異物が入ってくるのを防ぎます。
※耳道腺とは耳垢腺とも呼ばれるアポクリン腺の一種です。腋窩のアポクリン腺が発達した人では耳道腺もよく発達し、耳垢は粘性を示します。
音波は外耳道を通って鼓膜を振動させます。
鼓膜の振動は耳小骨によって増幅されて内耳に伝えられ、蝸牛のコルチ器官にある有毛細胞で感受されます。
(2)鼓膜
外耳と中耳の境目となる漏斗状の膜のことを「鼓膜」と言います。
鼓膜は入ってくる音に共鳴して同じ振動数で振動します。
(3)中耳
鼓膜の振動は、
・ツチ骨
・キヌタ骨
・アブミ骨
の3つの耳小骨を通して伝わります。
中耳と内耳の境目にある「前庭窓」の膜を振動させます。
中耳には、
・鼓膜張筋
・アブミ骨筋
と2つの筋があります。
(4)内耳
内耳は側頭骨の中にあり、
・聴覚受容器のある「蝸牛」
・平衡感覚受容器のある「前庭器官」
に分けられます。
蝸牛はラセン形に巻かれた管で、
「基底膜」と「前庭膜」の2つの膜によって、
「前庭階」「蝸牛管」「鼓室階」の3つの階に分けられます。
蝸牛管を満たしているのが「内リンパ」
前庭階と鼓室階を満たすリンパを「外リンパ」と言います。
蝸牛管の基底膜上に「コルチ器官」があり、その中に聴覚の感覚受容器である「有毛細胞」があります。有毛細胞は内リンパに接しています。
鼓膜に起こった振動は、
前庭階
↓
外リンパ
↓
前庭膜
↓
内リンパ
↓
蓋膜(コルチ器に覆いかぶさる膜)
↓
有毛細胞(コルチ器官から出ている細胞)
といった順に伝わっていきます。
(5)聴覚の伝導路
有毛細胞
↓
蝸牛神経
↓
延髄の蝸牛神経核
↓
中脳下丘の聴神経核
↓
視床の内側膝状体
↓
大脳皮質の視覚野