生理学

筋のエネルギー供給の仕組み まとめ

a.筋収縮のエネルギー代謝

筋肉は収縮も弛緩にもエネルギーが必要です。

エネルギーが使われるタイミングは以下の通りです。

1.筋収縮の過程でのミオシン頭部の運動
2.筋弛緩の過程でのカルシウムイオンの筋小胞体への回収

⇒カルシウムイオンポンプ

3.ミオシン頭部とアクチンとの結合の分離

⇒疲れるとミオシンとアクチンが離れないので強張ります。これが死後硬直の原因です。1日経過するとたんぱく質自体が壊れてアミノ酸に変わっていきます。

ATPによるエネルギー供給は、
1.無酸素的過程
2.有酸素的過程
の2つに分けられます。

無酸素的過程はさらに、
クレアチンリン酸とADPからATPを生成する「クレアチンリン酸機構」
解糖過程でのATP生成である「乳酸性機構」
に分けられます。

有酸素的過程は「酸化的リン酸化機構」と呼ばれるミトコンドリアでのATP生成の機構があります。

ATP生成が早いのは、
・クレアチンリン酸機構
・乳酸性機構
・酸化的リン酸化機構
の順になっています。

 

(1)ローマン反応

ADPがクレアチンリン酸からリン酸を受け取ってATPに再生される反応をローマン反応と言います。これはATPを生成する最も早い反応です。

クレアチンリン酸+ADP ⇔ ATP+クレアチン

ATPを消費する時の反応

クレアチンリン酸

クレアチン + Pi (リン酸)+ エネルギー

ADP + Pi + エネルギー

ATP

ATPを貯蔵する時の反応

ATP

ADP + Pi (リン酸)+ エネルギー

クレアチン + Pi (リン酸)+ エネルギー

クレアチンリン酸

 

(2)解糖

筋線維内に貯蔵されているグリコーゲンや血液から取り込まれたグルコースが、ピルビン酸に分解される過程でATPが供給される。
この反応は酸素を必要としないので、無酸素運動時の主なエネルギー供給を行います。
※30秒程度持続します。

この機構では最終的に乳酸が生成されます。

 

(3)クエン酸回路と電子伝達系

O2が十分に供給されると、解糖で生じたピルビン酸はクエン酸回路に入って、電子伝達系へとつながります。
この反応は有酸素運動の時に主にエネルギー供給を行います。

この機構では最終的にH20とCO2に分解されます。

 

b.筋の熱産生

筋収縮の種々の過程で発熱が起こりますが、時期によって2種類に分けられます。

(1)初期熱

収縮から弛緩するまでの間に発生する熱

(2)回復熱

収縮などで消費されたエネルギー源を再生するために発生する熱
(弛緩した後に発生する熱)