K.大脳
1.大脳基底核の構成は?
大脳基底核は大脳半球の深部にあって、「尾状核」「被殻」「淡蒼球」で構成されています。
それに加えて、間脳にある「視床下核」と、中脳にある「黒質」も大脳基底核に含む場合があります。
大脳基底核は運動の調節に関係しているので、障害が起きると運動障害や運動失調を引き起こします。
2.大脳辺縁系の構成は?働きは?
大脳半球の内側面にある「帯状回」「島」
前頭葉の「後眼窩回」
側頭葉の内側前部にある「海馬傍回」「海馬」
といったものが、発生学的に古く辺縁皮質と呼ばれています。
辺縁皮質とそこに密接に連絡する皮質下にある「扁桃体」や「中隔核」を合わせて大脳辺縁系と呼びます。
大脳辺縁系は、脳幹や視床下部、視床、大脳皮質感覚野、連合野とつながりがあり、大きく4つの機能を持ちます。
(1)本能行動の調節
視床下部による本能行動の発現を調節します。
※本能行動とは生理的欲求に基づく行動のことで、摂食、飲水、性行動、体温調節を指します。
(2)記憶
主に大脳辺縁系内の海馬が大脳皮質や視床とつながることで記憶に重要な働きをしています。
(3)情動行動の発現と動機づけ
情動行動とは、客観的にとらえることのできる感情の変化(心拍数の変化、顔色、筋緊張など)のことで、大脳辺縁系が情動行動の発現に関与しています。
動機づけというのは、一般的に行動を一定の方向にむけて発動させて、推進・維持させることを言います。
情動行動には「接近行動」「逃避行動」という2種類の行動があり、それぞれに動機づけとなる要因である「快情動」と「不快情動」があります。
情動行動は感覚刺激によって外的に起こりますが、刺激が無くても連合野を働かせることによって大脳辺縁系に影響を与えて内的に発生します。
どちらの感覚刺激も扁桃体で受け取って処理されるので、「扁桃体」が情動の鍵となる部分になっています。
(4)自律機能の統合
大脳辺縁系が視床下部と密接につながることで、本能行動や情動行動の発現とそれらに伴う種々の自立性反応の統合に重要な役割を果たしています。
例)大脳辺縁系にある部位を刺激
摂食行動(視床下部が中枢)に伴って、血圧上昇、腸の運動と血流の増大、骨格筋血流の減少と言った自立性反応が起こる。
3.辺縁皮質の構成は?
大脳半球の内側面にある「帯状回」「島」
前頭葉の「後眼窩回」
側頭葉の内側前部にある「海馬傍回」「海馬」
4.錐体路の通る場所は?障害で何が起こる?
錐体路とは、大脳皮質の運動野の巨大錐体細胞から始まります。
その巨大錐体細胞の軸索が束になって、内包を通り、脳幹、脊髄を下る際に、皮質脊髄路を形成します。
深部腱反射の亢進が起こります。
5.嫌悪系とは?
報酬系とは?
それぞれを構成する部位は?
伝達物質は?
脳内には快情動を求めて…
自らが電気刺激を繰り返す「報酬系」と、
電気刺激を避けようとする「嫌悪系」があります。
報酬系とは、中脳の腹側被蓋野から内側前脳束、前頭葉と大脳辺縁系などに投射してドーパミンを放出します。
※内側前脳束:前脳の内側部を通過する軸索繊維の束。腹側被蓋野と側坐核を結ぶ繊維を含む。
※前脳:
嫌悪系とは、扁桃体から視床下部前部、内側部を通って中脳の中心灰白質などに作用してアセチルコリンを放出します。
6.側頭連合野、頭頂連合野、前頭前野、後頭連合野の働きは?
①前頭連合野
前頭連合野は知性や理性といった高いレベルの精神機能の役割を果たしています。
報酬の価値判断と、その判断に基づく行動の選択や企画に強く関連しています。
②頭頂連合野
頭頂連合野は空間を認識します。
視覚野から空間を認識するための情報を受け取って、見たものの空間の位置関係や方向を認識する機能を担っています。
また、運動の回数や物体の個数といった数の情報を抽象化する機能があります。
③側頭連合野
側頭連合野は視覚情報の意味付けを行います。
視覚情報を元にした物の形や人の顔、図形などを意味のある物として認識する働きがあります。
これらは形態認知や色認知と呼ばれる機能です。
④後頭連合野
見た物の名称を特定する機能があります。
視覚野の情報を元に、ものの名称の特定をすることができます。
一次視覚野で得られる情報は点の情報ですが、後頭連合野の機能によって二次視覚野で線情報に変換し、三次情報で像の移動情報も取得します。
7.視覚記憶とは?司るのはどこ?
側頭連合野が司ります。
8.記銘とは?想起とは?
「記銘」とは過去の経験を覚えることです。
「想起」とは記銘した内容を保持して思いだすことを言います。
9.非陳述記憶と陳述記憶の違いは?
長期記憶は記憶の内容から以下のように分けられます。
(1)陳述(宣言)的記憶
いつ、どこで、という内容を記憶する「エピソード記憶」と、単語などの知識を記憶する「意味記憶」の2種類の記憶があります。
(2)非陳述(非宣言)記憶
運動や技術を覚えるように、意識することなく記憶することを言います。これは手続き的記憶(手順記憶)とも言われます。
10.意味記憶とはどんなもの?
エピソード記憶とはどんなもの?
「意味記憶」とは単語などの知識を記憶することです。
「エピソード記憶」とは、いつ、どこで、といった内容を記憶するものです。
11.「赤いリンゴが落ちる」の認知システムを説明できる?
①「赤いリンゴが落ちるという」情景を見た時に、まず視覚野に点情報が集まって像ができあがります。これが「見えた」という状態です。
②側頭葉で、色の認知と物体の認知が行われることで「赤い」「リンゴ」だという認識がされます。
③頭頂葉で、視覚の運動情報が処理されるので「落ちた」という情報が認識されます。
④「赤い」「リンゴ」「落ちた」という3つの情報が統合されることで「赤いリンゴが落ちた」という情報になります。
12.睡眠に周期はある?
どうなると睡眠が起こる?
加齢との関係は?
睡眠中の体の状態は?
人間は睡眠と覚醒を1日周期で繰り返します。
日中の睡眠の割合は年齢とともに短くなります。
網様体の働きが抑えられると睡眠が起こります。
睡眠状態では筋緊張が低下し、反射活動も弱くなり心拍数や血圧も減少するので、身体の活動水準が低下した状態となります。
この時の脳波は基本的にはθ波やδ波と言ったゆるやかな波(徐波)がみられます。
13.レム睡眠、ノンレム睡眠とは?
REM睡眠とは「Rapid Eye Movement睡眠」のことで逆説睡眠とも言われます。
成人ではおよそ90分毎に出現するので、だいたい睡眠全体の20%を占めると言われています。
新生児や乳児ではレム睡眠の占める割合が大きくなっています。
REM睡眠の特徴は、
・全身の筋緊張が消失
・眼球が急速に動く
・心拍数や呼吸が乱れる
・夢をみていることが多い
・顔面や指の筋に断続的な小さな収縮がみられる
non-REM睡眠は徐波睡眠とも言われています。
副交感神経が優位な状態で、脳の中でも覚醒時によく使われた言語野や前頭葉といった部位の機能が低下して休まります。
体温調節や概日リズムの中枢である視索前野は活性化します。
※視索前野は視床下部の一部
14.非連合学習とは?連合学習とは?
辺縁系や前頭前野と関わりの深い学習は?
過去の経験に基いて、行動や反応を比較的長い間変化させる能力を学習と言います。
学習は非連合学習と連合学習の2つに分けられます。
(1)非連合学習
一つの事柄や刺激について学ぶ場合のことです。
また非連合学習でも、同一の刺激や事柄を繰り返し与えることでそれに対する反応が変化していきます。繰り返しの刺激によって生体反応が減少していく「慣れ」と、繰り返しの刺激が強かったり痛かったりすることで生体反応が増強するものを「鋭敏化」と言います。
(2)連合学習
連合学習には「古典的条件づけ」と「オペラント条件づけ」の2パターンあります。
古典的条件付けは、無条件刺激と条件刺激の2つの刺激間の連合が学習されることです。
無条件刺激とは反射を起こす刺激で、条件刺激とは反射と無関係な刺激のことです。
その条件刺激と無条件刺激が近いタイミングで繰り返し与えられると、そのうち条件刺激のみでも反射が起こるようになります。
ex)パブロフの犬の話。ベルの音と肉を与える話。
オペラント条件づけは、ある行動をしたときにのみ好ましい刺激(報酬)or嫌いな刺激(罰)を与えることで、その行動が起こりやすくなったり起こりにくくなることを言います。
15.脳波とは?脳波の種類は?どのようなときに現れる?
脳波(EEG:Electro Encephalo Gram)は脳の自発的な電気的活動を導出記録したものです。
ヒトの脳波は周波数にしたがって分類されます。
(1)α波
周波数は8〜13Hzで、振れ幅は普通25〜50μV。
正常な成人が目を閉じて安静にした状態(安静閉眼時)で最もよく現れます。
(2)β波
周波数が14Hz以上のものをいいます。
精神活動中や感覚刺激を受けたときなどに現れます。
(3)θ波
周波数は4〜7Hzです。
睡眠時に著名に現れます。
(4)δ波
周波数は0.5〜3Hzです。
深睡眠時や深麻酔の際に現れます。乳児では覚醒時にも見られます。
※異常派
正常成人より遅い周波数成分の波が多く、またスパイク(棘波)など普通にはみられない特殊波形の電気活動がみられることがある。
脳波はれんかん(γ波)などの診断や脳死の判定に用いられます。
L.脳脊髄液
1.脳脊髄液についてどこを満たす?産生はどこで?吸収はどこで?採取はどこから?
脳脊髄液はクモ膜と軟膜で構成されるクモ膜下腔を満たしています。
脳脊髄液を産出するのは脈絡叢で、側脳室(左右の大脳にある)や第三脳室(左右の間脳の間にある)、第四脳室(脳幹の背側にある)のいずれにも存在しています。
量を一定に保つために、過剰な脳脊髄液は硬膜静脈洞や脊髄周囲の静脈叢で吸収されます。
脳脊髄液を静脈中に吸収する機構をクモ膜顆粒といいます。
脳脊髄液の採取は一般的に腰椎穿刺が行われます。脊髄はL1~2あたりまであるので、脊損を防ぐためにL3~4あたりで行います。
M.末梢神経系
N.自律神経系
1.自律神経系で出てきた受容体の種類と存在場所、イオンチャネル型と代謝調節型の分類
①ニコチン受容体はイオンチャネル型で、自律神経節のシナプス後膜に存在します。
②ムスカリン受容体は代謝調節型で、副交感神経系の効果器細胞の膜に存在します。
③α受容体、β受容体はいずれも代謝調節型で、交感神経系の効果器細胞の膜に存在します。
2.アドレナリン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロンとは?
・交感神経節前ニューロン末端
・副交感神経節前ニューロン末端
・副交感神経節後ニューロン末端
から放出される神経伝達物質がアセチルコリン(ACh)であり、AChを放出するニューロンをコリン作動性ニューロンと言います。
・交感神経節後ニューロン末端
から放出される神経伝達物質をノルアドレナリン(NA)といい、NAを放出するニューロンをアドレナリン作動性ニューロンと言います。
3.アドレナリンやアセチルコリンが放出されると何が起こる?
節後ニューロンの細胞体にあるニコチン受容体や、効果器細胞にあるムスカリン受容体やα受容体やβ受容体に作用します。
4.自律神経の二重支配、拮抗支配とは?
①二重支配
内臓器官の多くは、交感神経と副交感神経の遠心性線維によって二重に支配されています。これを二重支配と言います。
ほとんどの器官が二重支配を受けていますが、二重支配を受けない器官があります。
※交感神経のみの支配を受ける器官
瞳孔散大筋、副腎髄質、立毛筋、汗腺、大部分の血管
※副交感神経のみの支配を受ける器官
瞳孔括約筋
注)瞳孔は二重支配か?となるとYesになります。
②拮抗支配
一般的に「交感神経遠心性線維」と「副交感神経遠心性線維」による同一効果器に対する作用は相反するものです。これを拮抗支配と言います。
心拍数は交感神経の活動によって促進されるので心拍数増加などが起こり、副交感神経の活動によって抑制されるので心拍数は減少します。
胃腸管は交感神経の活動によって抑制されるので平滑筋弛緩や分泌抑制などが起こり、副交感神経の活動によって促進されるので平滑筋収縮や分泌促進が起こります。
※拮抗支配ではない二重支配
唾液腺の分泌
交感神経と副交感神経の両方の活動によって促進されます。
5.アドレナリンα受容体、β受容体はどのような場所にある?働きは?
アドレナリンα受容体、β受容体のどちらも交感神経系の効果器細胞膜にあります。
α受容体は、全身の血管収縮や胃腸管の括約筋の収縮などに関与します。
β受容体は、心拍数増加や心収縮力増大、脂肪分解促進、骨格筋の血管拡張、気管支拡張、胃腸管の平滑筋弛緩などに関与します。
覚え方としては、
α受容体は基本的に収縮に関与
β受容体は基本的に拡張に関与、さらに心臓の収縮に関与します。
6.代謝調節型アセチルコリン受容体の別名は?
イオンチャネル型アセチルコリン受容体の別名は?
神経筋接合部にあるのは?
副交感神経系の効果器にあるのは?
副交感神経節後ニューロンのシナプス下膜にあるのは?
アセチルコリン受容体はイオンチャネル型のニコチン受容体と、代謝調節型のムスカリン受容体があります。
神経筋接合部にあるのは…
まず、神経筋接合部というのは運動ニューロンの神経終末が骨格筋にシナプス形成する場所です。ここは運動終板とも言います。
骨格筋に存在する受容体はニコチン受容体です。
※ちなみに平滑筋に存在する受容体はムスカリン受容体です。
副交感神経系の効果器細胞にあるのはムスカリン受容体です。
副交感神経の節後ニューロンのシナプス下膜にあるのはニコチン受容体です。
7.交感神経系で白交通枝を通るのは?灰白交通枝を通るのは?
交感神経の節前ニューロンの軸索は、脊髄前根や白交通枝を通って交感神経節に達します。
交感神経幹でシナプスを形成して、節後ニューロンが灰白交通枝を経て脊髄神経に入ります。
8.自律神経系の中で、副腎髄質が特別なわけは?
副腎髄質は節前ニューロンによって直接支配されるから。
9.内臓ー内臓反射、体性ー体性反射、体性ー内臓反射、内臓ー体性反射の例を挙げられる?
10.アセチルコリンの合成と分解、ノルアドレナリンの合成と分解はどのように行われる?
《アセチルコリン》
合成
「コリン」と「アセチルCoA」を原料に、アセチルコリン合成酵素である「コリンアセチルトランスフェラーゼ(CAT/ChAT)」によって合成されます。
分解
アセチルコリン分解酵素である「アセチルコリンエステラーゼ(AChE)」によって、「コリン」と「酢酸」に分解されます。
分解されたコリンは、神経終末に取り込まれてアセチルコリンの合成に使われます。
《ノルアドレナリン》
合成
チロシン(アミノ酸)からドーパ ⇒ ドーパミン(神経伝達物質)を経てノルアドレナリンが合成されます。
分解
①再取り込みされたノルアドレナリンの一部
神経終末のミトコンドリアにあるノルアドレナリン分解酵素である「モノアミン酸化酵素(MAO)」により分解されます
②再取り込みされなかったノルアドレナリン
効果器の細胞膜にある分解酵素である「カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)」によって、ノルメタネフリン(NMN)に分解されて不活性化されます。
③不活性化されなかったノルアドレナリン
※NMNにならなかったもの
循環血中に入り、肝臓において代謝されます。