臨床医学総論

臨床医学総論 第5章 局所の診察

1.頭部

(1)大頭症
(2)水頭症
(3)小頭症
(4)脱毛症
  • 円形脱毛症
  • 壮年性脱毛症(男性型脱毛症)
  • 粃糠性脱毛症

 

2.顔面部

(1)顔面の麻痺

末梢性顔面神経麻痺

ベル麻痺とラムゼイハント症候群に分けられる。

〈共通症状〉

口角下垂、鼻唇溝の消失、閉眼障害(患側)、ベル現象、舌前2/3の味覚低下、唾液腺・涙腺の分泌低下、聴覚過敏、アブミ骨筋性耳鳴、ワニの涙症候群、患側のしわよせ不可

ベル麻痺(60%)
〈原因〉

単純ヘルペスウイルスⅠ型

ラムゼイハント症候群(15〜20%)
〈原因〉

水痘帯状疱疹ウイルス

 

破傷風
〈症状〉

顔面筋が痙攣し、無理に笑ったような顔になる(痙笑
※他に開口不全(牙関緊急)などの症状も見られる。

〈原因〉

破傷風菌

 

先端巨大症
〈症状〉

頬骨、顎、上眼窩縁が突出
耳、鼻、唇の肥大

 

(2)腫脹

流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
〈症状〉

一側or両側の耳下腺がびまん性に腫脹
膵炎、睾丸炎などを合併

〈原因〉

ムンプスウイルス

 

(3)異常運動

チック

顔面に最も多い不随意運動

〈症状〉

まばたき、口をゆがめる、鼻翼を動かすなど

〈原因〉

ストレス

 

3.眼

(1)視力

結像場所 矯正方法
近視  網膜の前方 凹レンズ
遠視  網膜の後方 凸レンズ
乱視  点として結像しない 円柱レンズ

 

(2)視野

視野欠損

視神経萎縮、脳腫瘍、脳外傷などで、視野の一部や全体が見えなくなること。
ちょうど半分の視野が見えなくなることを「半盲」という。

(3)眼瞼

 

 

(6)眼球突出

内分泌疾患、代謝異常、先天性の場合がある。

「甲状腺機能亢進症=バセドウ病」で多く見られる。
★バセドウ病=眼球突出

〈原因〉

甲状腺ではサイロキシンが分泌される。それにより、
・上眼瞼挙筋の過剰収縮が起こる。
・眼窩内脂肪体の炎症によって肥厚が起こる。

(7)瞳孔異常

(8)眼球運動・複視

眼球運動の障害

〈原因〉

 

(9)ベル現象

末梢性顔面神経麻痺
〈症状〉

片側が閉眼できない患者に閉眼を指示すると、患側眼球の上転が認められる。
閉眼不全
兎眼

4.鼻

5.耳

伝音性難聴(外耳〜中耳)

外耳道閉塞や中耳炎でみられる

〈症状〉

低音声耳鳴(鈍いうなるような音)

 

感音性難聴(中耳〜内耳)

内耳、聴神経、聴覚中枢の障害でみられる。メニエール症候群に類似

〈症状〉

高音性耳鳴(鈴や笛のような音)

〈検査法〉

リンネ試験:音叉を乳様突起に当て、音が聞こえなくなったときに外耳道に置き音の感知状態を診る。

ウェーバー試験:音叉を頭頂に当てる。伝音性障害では患側が大きく聞こえ、感音性障害では健側が大きく聞こえる。

6.口腔

1)視診

兎唇

先天性奇形で、そのうち治る

 

口唇・口角の亀裂、びらん
〈原因〉

ビタミンB2不足

 

口唇ヘルペス
〈原因〉

ウイルス感染症

 

2)口臭

 

3)味覚

4)舌の異常

 

5)口腔粘膜の異常

(6)歯の異常

(7)(8)咽頭、扁桃、喉頭の異常

 

7.頸部

1)頸部硬直

髄膜刺激症状の1つ。仰臥位で患者の後頭部に手を当てて静かに持ち上げると強い抵抗を示す。
髄膜刺激症状を示すテストは他に

  • ラセーグ徴候
  • ケルニッヒ徴候
  • ブルジンスキー徴候
  • ネックフレクションテスト
  • ジョルトアクセンチュエーションテスト
〈原因〉

髄膜炎、髄膜腫瘍、くも膜下出血

 

2)甲状腺腫

びまん性の腫脹

バセドウ病

やや硬く弾力性のある腫脹。血管雑音を聴取する場合あり。

〈症状〉

メルゼブルクの3徴候があらわれる。
・甲状腺腫大
・眼球の突出
・頻脈

 

慢性甲状腺炎(橋本病)

中高年女性に多く、ゴム様弾性があり、かなり硬い。

〈症状〉

橋本病のうち甲状腺機能低下症なのは10%。
浮腫、発汗低下、徐脈、脱毛、筋力低下、寒がり、思考力低下、意識低下、易疲労、便秘、皮膚乾燥

 

5)斜頸

原因不明。
片側の胸鎖乳突筋が拘縮し、短縮した状態。
頭部は患側に傾斜。顔面部は健側に傾斜。

 

6)翼状頚

〈原因〉

ターナー症候群(頸部が翼のようになっている)

 

8.胸部

 

9.乳房

10.肺・胸膜

1)肺の打診

肺肝境界を確認し、肺下界を決定する。健常者では肺下界は「第10肋骨or第10胸椎棘突起」の高さ。

  • 清音:正常肺野
  • 鼓音:肺気腫、気胸の罹患側
  • 濁音:胸水貯留、胸膜炎による胸膜肥厚

2)副雑音

 

11.心臓

1)心尖拍動

心臓の収縮によって肋間部が局所的に規則正しく隆起する。
通常、座位で左第5肋間の鎖骨中線でやや内側に位置する。
心肥大によって心尖拍動は強く広範囲になるが、運動直後や精神興奮でも心尖拍動は増強する

2)心濁音界

心臓部を打診すると濁音、周囲が正常肺野であれば清音を呈するので心臓の形が決定できる

3)心音

Ⅰ音

心室収縮期と同時に起こる
低く、鈍い、長い
房室弁の閉鎖音」と「心筋収縮音

Ⅱ音

心室収縮期の終わりに聞こえる音
高い、鋭い、短い
動脈弁の閉鎖音

Ⅲ音

心室拡張期に心室に血液が流入することにより、「心室筋・房室弁が振動する音」
短く、弱い
幼小児、若年者で聞こえる
心肥大でも聞こえる

Ⅳ音

心肥大」「心拡大」が原因で起こる
心房からの少量の血液の流入で生じる衝撃を逃すことができずに発生する音

 

※ファロー四徴症(TOF)「先天性心奇形」
〈原因〉
  1. 肺動脈狭窄
  2. 大動脈騎乗
  3. 心室中隔欠損
  4. 右室肥大
〈代表症状〉
  1. チアノーゼ
  2. 太鼓ばち指
  3. 蹲踞(歩くとしんどくなり、休むと楽になる)
  4. 赤血球増加症

 

12.腹部

(1)皮膚線条

肥満や妊娠など下腹部、四肢付着部、臀部などの皮膚が急激に伸展されると、その部位の皮下組織が断裂し皮下の毛細血管が赤く透けて見える。
赤色:クッシング症候群、副腎皮質ステロイド大量投与者
白色:肥満など

(2)腹壁静脈の怒張

門脈や下大静脈の血行障害が起こると、血液が腹壁静脈を流れて還流されるようになり、腹壁静脈が拡張し怒張する。

 

メズサの頭

臍周辺に見られる放射状の動脈怒張

〈原因〉

肝硬変

 

※門脈の側副血行路
  1. 腹壁動脈:メズサの頭
  2. 食道動脈叢:食道動脈瘤
  3. 直腸動脈叢:痔核

(3)腹壁の緊張・膨隆・陥凹・腫瘤

腹壁の緊張
〈症状〉

腹腔内の炎症が壁側腹膜に及ぶと反射的に腹壁筋肉が緊張する

〈原因〉

筋性防御(内臓体性反射)

腹部陥凹
〈症状〉

腹部全体の陥凹

〈原因〉

急性汎発性腹膜炎、麻痺性イレウス

 

腹部膨隆
〈原因〉

腹水、鼓腸、肥満、妊娠、腹部腫瘍、卵巣嚢胞など

 

(4)圧痛点

虫垂炎
  1. マックバネー点:臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上の外方1/3or中点
  2. ランツ点:左右の上前腸骨棘を結ぶ線上で右外1/3
  3. ブルンベルグ徴候:圧痛点を話した時に痛む(反跳痛
  4. ロブジング徴候:手掌で左下腹部を圧迫すると、右下腹部が痛む
胃潰瘍

ボアス点:Th10〜12胸椎棘突起の側方3cm以内の左側

 

(5)グル音

腹鳴。腸管の蠕動運動により空気と内容物が移動する音。
蠕動運動の亢進で「増強
蠕動運動の停止で「消失

 

(6)腹部内臓の触診

心窩部(A):胃癌、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、膵炎

右季肋部(B):肝、胆。クールボアジェ徴候(胆嚢腫大)

左季肋部(B’)

 

13.背部

14.四肢

1)上肢の変形

2)下肢の変形

尖足
〈症状〉

足関節背屈ができない。鶏歩

〈原因〉

総腓骨神経麻痺

 

踵足
〈症状〉

足関節背屈が強く、踵で歩くようになる

〈原因〉

脛骨神経麻痺