臨床医学各論

臨床医学各論Ⅲ 中間試験準備

B.一般外科

a.損傷概論

「炎症の4主徴とは?」

《腫脹》滲出液で組織が腫れる

《発赤》毛細血管の拡張で赤くなる

《発熱》組織反応で熱を生じる

《疼痛》末梢神経で刺激されて痛みを生じる

 

炎症の治癒過程

第1期「炎症反応期」(受傷後4,5日の過程)
  1. 皮膚が損傷を受けて組織が破壊される
  2. 血管が断裂して出血する
  3. 血液中の血小板が、破壊された膠原線維に付着して活性化する
  4. 活性化した血小板が、さらに他の血小板を集めてどんどん活性化する
    ※ここまでが一次止血
  5. 活性化した血小板が凝固因子を放出する。
  6. 凝固因子の作用で、血液中のプロトロンビンがトロンビンになる
    ※プロトロンビンは肝臓で生成される酵素蛋白質
  7. トロンビンの作用でフィブリノゲンがフィブリンになる
    ※フィブリノゲンは血漿蛋白で、フィブリンになると血液凝固因子となる
  8. フィブリンが血小板や赤血球を巻き込んで血栓を形成する
    ※ここまでが二次止血
  9. 破壊された組織から、様々な化学物質が放出される
  10. 化学物質が周辺に浸透し、異常発生のシグナルを発信する
  11. シグナルによって毛細血管壁の内皮細胞の間に隙間が生じる
  12. リンパ球や白血球、単球が浸出液として血管から抜け出し傷口に移動する
  13. 単球はマクロファージとなり、これがさらに化学物質を放出し次のシグナルになる

 

第2期「増殖期(肉芽形成期)」(第1期終了後1〜2週間)
  1. マクロファージが放出した化学物質が刺激となって、線維芽細胞が呼び寄せられる。
  2. 線維芽細胞から修復に使われる膠原線維(コラーゲン)が生み出される。
  3. さらにマクロファージからは、血管内皮細胞に対して血管を新生するシグナルも出る。
  4. 線維芽細胞が産生した膠原線維に支えられて毛細血管が発達する。
  5. 新鮮な血液が線維芽細胞を栄養し、さらに膠原線維が産出され自己増殖サイクルが構成される

 

第3期「成熟期」
  1. 線維芽細胞の活性が落ちて、膠原線維の生成が少なくなる
  2. 膠原線維の生成量と分解吸収量が同じになり安定状態になる
  3. 再生した表皮細胞の下の組織は、いつまでも瘢痕組織として残る

 

熱傷範囲の判定

9の法則とは…

成人の場合に用いられます。
身体の各部分を11箇所に細分化して、それぞれの面積が体表面積の9%あるいは18%に当たるとして簡約化した法則です。

成人
頭部 9%
それぞれの左右上肢 9%
それぞれの左右下肢 18%
体幹前面 18%(腹部9%、胸部9%)
体幹後面 18%(腹部9%、胸部9%)

 

「5の法則」とは…

幼児と小児は成人と比べて頭部の面積の比率が大きく下肢の面積の比率が小さいので、年齢によって幼児・小児に分類して身体の各部位を5の倍数で評価します。

小児 幼児
頭部 15% 20%
それぞれの左右上肢 10% 10%
それぞれの左右下肢 15% 10%
体幹前面 20% 20%
体幹後面 15% 10%

 

熱傷指数(Burn Index:BI)とは…

= 1/2 × Ⅱ度熱傷面積(%) + Ⅲ度熱傷面積(%)
※Ⅱ度熱傷面積の半分とⅢ度熱傷面積の和ですね。

重症度 Ⅱ度の場合 Ⅲ度の場合
軽度熱傷 10%以下 2%以下
中程度熱傷 10〜30%以下 2〜10%以下
重症熱傷 30%以上 10%以上
※深達度の分類
〈Ⅰ度熱傷〉

発赤あり、疼痛あり、水疱なし

〈浅達性Ⅱ度熱傷〉

水疱がみられ、これを破壊するとびらんとなります
強い灼熱感、疼痛があります

〈深達性Ⅱ度熱傷〉

皮膚に水疱があらわれ、これを破壊してもやや乾燥しています
※水疱の真皮が白くなっています。
疼痛は軽度です(自由神経終末が損傷しているから)

〈Ⅲ度熱傷〉

皮膚全層の凝固壊死です。
創面は蒼白、乾燥して水疱形成はありません。
痛覚は消失しています

 

b.ショック

細菌性ショックとは…

ショックとは、末梢組織への有効な循環血液量が減少する「急性循環不全」によって、臓器や組織の生理機能が障害される状態です。

ショックは原因によって4つに分類できます。

  1. 出血性ショック
  2. 心原性ショック
  3. 細菌性ショック
  4. 神経性ショック

細菌性ショックとは、敗血症時のショックのことを言います。(グラム陰性桿菌で多い)

敗血症は特定の細菌感染によって起こりやすくなっています。(敗血症は細菌が血管やリンパ管に入って起こる)
細菌が産生する毒素(エンドトキシン)によって、身体の中の細胞が炎症を誘発するサイトカインを放出することで、敗血症が起こりショックに至ります。

 

ショックの5P徴候とは…

  • 「蒼白(pallor)」
  • 「虚脱(prostration)」
  • 「冷汗(perspiration)」
  • 「脈拍触知不能(pulseless)」
  • 「呼吸不全(pulmonary insufficiency)」

敗血症ショックとは…

【誘引】

大腸菌、緑膿菌、セラチアなどに感染

【症状】

初めに、一酸化窒素などの血管拡張物質の過剰産生により血管抵抗が低下するために四肢が温かくなり血圧が下がるwarm shock、いわゆる「高心拍状態(hyperdynamic state)」になり、そこから敗血症の進行によって血管内皮細胞が障害をうけると、血管拡張性や血液凝固抑制が損なわれ、抹消循環の乏しいcold shockへと移行し、「低心拍状態(hypodynamic state)」になります。

 

c.外科的感染症

感染症名と原因菌…

ブドウ球菌が原因のもの
  • 癤(せつ)
  • 癰(よう)
    ※癤(せつ)が複数集まったもの
  • 蜂巣炎
  • 瘭疽(ひょうそ)
  • 丹毒
  • リンパ節炎
  • 血栓性動脈炎
  • 化膿性筋炎
  • 化膿性骨髄炎
クロストリジウム菌(嫌気性菌)が原因のもの
  • ガス壊疽
破傷風菌が原因のもの
  • 破傷風
結核菌(抗酸性桿菌)が原因のもの
  • 結核

 

d.救急処置

ショック指数とは…

出血性ショックの度合いを推定するための方法

「心拍数/収縮期血圧」で表す。

ショックの程度 ショック指数 循環血液の不足量
0.5 正常
0.8 10~20%
1.0 20~30%
1.2 30~40%
1.4 40~50%

 

意識レベルとは…

日本昏睡尺度(JCS)を使用します。

刺激しないでも覚醒している だいたい意識はあるが、今ひとつはっきりしない
見当障害(時間、場所が分らない)
自分の名前、生年月日が言えない
刺激すると覚醒する 10 普通の呼びかけで容易に開眼する。言葉も出るが間違いも多い
20 大きな声または身体を揺さぶることで開眼する。
30 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと開眼する
刺激しても覚醒しない 100 痛み刺激に対して、払いのけようとする
200 痛み刺激で、少し手足を動かしたり、顔をしかめる
300 痛み刺激に反応しない

 

応急処置のABC,DEFについて

  • A(Airway):気道の確保
  • B(Breathing):呼吸と換気
  • C(Circulation):循環
  • D(Durg):昇圧薬、アトロピン、抗不整脈剤、点滴
  • E(ECG):心電図モニター
  • F(Fibrillation):除細動

 

e.心肺蘇生術

C.麻酔科

a.全身麻酔

b.局所麻酔