解剖学

解剖学 女性生殖器まとめ

1)卵巣

卵子を作り出す器官です。

卵子の元となる卵母細胞を維持・成熟させ、その後「排卵」します。

卵巣の位置を固定する2本のヒモを
・固有卵巣索(卵巣と子宮膜をつなぐ)
・卵巣提索(卵巣と骨盤壁をつなぐ)

全体が腹膜に覆われています。卵巣を覆う膜を「卵巣間膜」といいます。

卵巣の外側には「卵管采」があります。

卵巣の内部構造は、皮質と髄質に分かれています。
髄質は卵巣門から入ってくる血管や神経、リンパ管が多く分布しています。

 

(1)卵胞

卵巣の中にたくさんある球状の細胞のかたまりです。
卵胞には1個の卵細胞が入っていて、それを卵巣の細胞が包んでいます。
卵胞は卵巣皮質で成熟していきます。

〜卵胞形成〜

卵胞が形成されるまでに約375日かかります。(この間に13回の月経があります。)
卵胞は次々と成熟していくので、卵巣の中には常に全ての発育段階の卵胞を含むことになります。

卵胞形成は、排卵で終了します。

卵胞は生育段階によって呼び名が決まっています。

①原始卵胞
②一次卵胞
③二次卵胞
④胞状卵胞
⑤成熟卵胞(グラーフ卵胞)

卵胞形成開始から360日ほど経過すると、卵胞上皮内に卵胞腔という隙間ができてそこに卵胞液が溜まります。
その腔が大きくなるにつれて卵子は周辺によっていき、胞状卵胞となります。
卵胞膜から「卵胞ホルモン(エストロゲン)」が分泌され、さらに卵胞の発育が促進されます。
卵胞ホルモンや卵胞刺激ホルモン(FSH)によって発育した卵胞の中で1番発育したものだけを残して、他は退縮にしていきます。
※退縮することを「卵胞閉鎖」と言います。
残った1つの卵胞が成熟卵胞となって、卵細胞が二次卵母細胞になっていきます。

〜排卵〜

成熟卵胞が卵巣の表面に盛り上がり、破裂して卵胞細胞を腹腔に放出して卵胞形成が終わります。
排出された卵子は卵管采に包まれて卵管の腹腔口から卵管内に入ります。

 

(2)黄体・白体

排卵したあと、卵巣に残った卵胞は出血して赤くなります。
※この状態を赤体と言います。

しばらくすると脂肪滴と黄色い色素に満たされて大きな細胞集団になります。
※この状態を黄体といいます。

卵子が受精して子宮内膜に着床すると、黄体は「妊娠黄体」となって持続します。

受精しなかった卵胞は月経黄体として2週間後に退縮して、結合組織が増えて白体となります。

黄体からは、
・月経周期において、子宮内膜を肥厚させる(着床しやすくなる)
・妊娠周期において、妊娠を維持する
黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。

 

2)卵管

卵巣から排卵された卵子を取り込んで子宮に運ぶ管です。
卵子を運びやすくするために、線毛円柱上皮となっています。
卵巣に近い部分を「卵管膨大部」
子宮に近い部分を「卵管峡部」と言います。

卵子は卵管采から取り込まれ、卵管膨大部で受精します。
受精後、子宮に到達するまでに3〜4日かかります。
その間に分裂し、「桑実胚」となります。

受精後5〜7日後、
胚盤胞となって子宮内膜に着床します。

卵子の輸送は…
・卵管の筋層の運動
・卵管上皮細胞の線毛
によって行われます。
※このいずれかがうまく機能しないと、卵子を子宮に送れないために不妊の原因の1つになります。

子宮外妊娠とは…

本来、卵管膨大部で受精した卵子は子宮に着床しますが、その手前の卵管壁に着床してしまうことを指します。
その場合、卵管壁で受精卵が発育してしまい、卵管壁が破裂して大出血が起こるので母子ともに危険な状態になります。

 

 

3)子宮

骨盤の中央に位置して
・前方には膀胱
・後方には直腸
が接しています。
大きさは鶏の卵くらいで、前後に扁平ななすび型をしています。

子宮は一般的に前傾で前屈位をとっています。

子宮の上2/3を「子宮体部
子宮の下1/3を「子宮頸部

子宮体部から子宮頸部への移行部分を「子宮峡部
子宮頸部の下端で膣の中に突出する部分を「子宮膣部

(1)子宮広間膜

子宮と卵管を上方からすっぽりと覆う腹膜があり、その腹膜が垂れ下がり腹膜の前後が合わさって間膜となります。これを子宮広間膜と言います。

子宮広間膜の中に、固有卵巣索子宮円索が含まれます。

〜子宮円索〜

子宮の左右両側の上隅から起こり、骨盤側壁を前方に走り、鼠径管を通って、腹腔の外に出て大陰唇の皮下に至ります。
子宮は子宮円索によって前方に引っ張られて、前傾の位置に固定されます。

 

(2)子宮壁の構造

子宮壁は厚さ約1.5cmで、
・子宮内膜(粘膜)
・子宮筋層
・子宮外膜(漿膜)
の3層で構成されています。

〜子宮内膜〜

単層円柱上皮が管状に固有層の中に深く落ち込み、子宮腺(管状腺)が形成されます。
子宮腺と子宮腺の間を表層に向かってらせん状に曲がりくねったラセン動脈(元は子宮動脈)が上行します。

子宮内膜は
・機能層(表層:月経の際に剥離する)
・基底層(深層:月経終了後に粘膜がここから再生される)
に分かれています。
※生理では機能層を排出しています。

〜子宮筋層〜

子宮壁で最も厚い層で、錯綜する平滑筋で構成されます。

〜子宮外膜〜

子宮底と子宮体後面のみが漿膜に包まれています。
他の周囲は結合組織に移行します。

 

4)膣

子宮に続く、長さ約7cmの前後に扁平な管状の器官です。
前方に尿道、後方に直腸があります。
尿生殖隔膜を貫いて、膣前庭に開きます。(膣口)

〜膣口〜

処女膜によって部分的に閉ざされます。
膣の上部では球状に突出する子宮膣部を輪状に囲みます。そこにできたくぼみを膣円蓋といいます。
膣円蓋は前部よりも後部の方が深くなっています。

〜膣粘膜〜

非角化重層扁平上皮(角化しない重層扁平上皮)で構成されています。
多数の横ヒダがみられ、粘膜下には内輪層、外縦走の平滑筋があります。

 

 

5)外生殖器(外陰部)

正中部に見られる裂け目を「陰裂
陰裂の左右の皮膚の隆起を「大陰唇
と言います。
※大陰唇は男性の陰嚢にあたります。

左右の大陰唇は恥骨結合の前方で合わさって恥丘を作ります。
恥丘は皮下脂肪が発達して盛り上がり、思春期になると陰毛が映えます。

 

(1)小陰唇と陰核

〜小陰唇〜

大陰唇の内側にある、無毛で色素に富む皮膚のヒダです。

〜陰核〜

左右の小陰唇が合わさる前端にある小さな突起で、男性の陰茎にあたります。
内部の「陰核海綿体」が性的に興奮すると勃起します。

 

(2)膣前庭

左右の小陰唇に囲まれた領域のことです。
前部に尿道が開口します。これを外尿道口と言います。

〜前庭球〜

膣前庭の両側には、静脈叢でできた海綿体に存在します。
前庭球は男性の尿道海綿体にあたります。

〜大前庭腺(バルトリン腺)〜

前庭球の後端で、膣前庭に開口します。
大前庭腺は男性の尿道球腺にあたります。
これは性的興奮によって粘液を分泌し、膣前庭を潤します。