病理学概論

病理学概論 第5章 退行性病変 〜 第7章 炎症 ノート

全体像をマインドマップで確認

1.アミロイド変性

アミロイドとは…

特異なたんぱく質からできており、デンプン反応は混在する糖蛋白によるものとされている。
毛細血管や小動静脈壁および周囲の結合組織(細胞外)に沈着する。それによって実質細胞は圧迫萎縮に陥り臓器は機能障害をおこす。
腎臓や心臓では尿毒症や心不全の原因となる。

アミロイドが沈着しやすい臓器
  • 肝臓
  • 脾臓
  • 心臓
  • 腎臓
  • 膵臓
  • 血管
アミロイドの沈着に関与する疾患
  • アルツハイマー型認知症
  • 2型糖尿病
  • パーキンソン病
  • 伝達性海綿状脳症(狂牛病)
  • ハンチントン病
  • 関節リウマチ
  • 動脈硬化症
  • 褐色細胞腫
  • 骨髄炎
  • 多発性骨髄腫
  • 不整脈

2.糖尿病

インスリン作用の不足によって起こる高血糖をきたす疾患の総称

原発性糖尿病

インスリン分泌の低下や作用障害によって起こる。インスリン依存型とインスリン非依存型に分類される。

  • インスリン依存型:インスリン分泌量の低下によって20歳までに発症する若年型糖尿病(Ⅰ型糖尿病)に対応する。
  • インスリン非依存型:インスリンに対する反応性が低下し成人になって発症する成人型糖尿病(Ⅱ型糖尿病)に対応する。

※成人型糖尿病が糖尿病患者の大部分を占める。

続発性糖尿病

膵臓がんなどにより膵臓実質の消失によって生じる

 

長期にわたり糖尿病の状態が維持されると…

  • 微小血管障害や動脈硬化症の促進
  • 神経障害(糖尿病性ニューロパシー)の発症
  • 糖尿病性腎症の発症
  • 糖尿病性網膜症の発症

 

3.痛風

長期にわたる高尿酸血症によって、尿酸塩が関節軟骨や周囲組織に沈着し、激痛を伴って発症する急性の関節炎のこと。

核酸(ヌクレオチド)の代謝異常が原因。

核酸はプリン体とピリミジン体に分解される。

男女比は20:1。
70%の例で母指基節骨に沈着し尿酸塩の針状結晶が壊死異物反応を起こす

〈原因〉

遺伝要因もあるが、飽食・栄養過多が直接の原因

〈合併症〉

高脂血症、肥満

4.壊死と死の違い

壊死とは…

局所におこる細胞や組織の死であって、個体全体の死とは区別したもの

 

死とは…

生命維持に重要な心臓、肺、脳などの主要な器官の機能が停止したこと。

〈判定基準〉
  • 脈拍の停止
  • 呼吸運動の途絶
  • 瞳孔反射の消失

5.アポトーシス

生理的な細胞死や変態、生理的な組織の退縮にともなう計画された細胞死。
ATPレベルが保たれたまま、細胞が濃縮して脱落するもの。
※壊死はミトコンドリアや細胞が膨化する。

6.肥大と増殖

1)肥大

組織などが個々の実質細胞の固有の形や構造を失わないで容積を増すことにより、全体の大きさや重量を増やすこと

  • 単純肥大:個々の細胞が大きくなる
  • 数滴肥大:細胞数が増える(増生)
仕事肥大

臓器にかかった負荷に対応するために起こる臓器の肥大

〈例〉
  • 骨格筋:筋肉労働やスポーツによるもの。骨格筋は成熟後は細胞分裂しないので容積の増大しかしない。
  • 右心室肥大:肺性心(慢性肺疾患)によって肺高血圧が起こり、肺に血液を送り出す右心室に負担がかかり肥大する。僧帽弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全、肺動脈弁狭窄が起こることが原因。
  • 左心室肥大:大動脈弁狭窄、大動脈弁閉鎖不全、高血圧症が起こることが原因

 

7.化生

分化成熟を遂げた組織や細胞が、性質や形の異なる細胞組織に変化する現象

気管支や子宮頸部の慢性炎症 粘膜円柱上皮⇒扁平上皮
尿路系や膀胱の結石や慢性炎症 移行上皮⇒扁平上皮
胃の粘膜上皮の慢性炎症 胃粘膜上皮⇒小腸上皮
肺線維症のときの肺胞 扁平上皮⇒立方上皮
白板症 口腔、食道、膀胱などの粘膜の類表皮性化生

 

化生の分類
  • 間接化生:再生を前提とした化生
  • 直接化生:再生をともなわない化生

 

8.移植の分類

自己移植 同じ個体内での移植で、拒絶反応はなく永久に生着する
同系移植 一卵性双生児、移植片は永久に生着する
異系移植 遺伝的に異なる間で行われる移植(親子間)拒絶反応が起こりうる
異種移植 動物の異なる間での移植(ヒトとサル)拒絶反応がおき生着しない

 

9.器質化

異物を排除できない場合、異物のまわりに肉芽組織がつくられ異物を取り込み処理していく。その後は瘢痕を残す。
異物を隔離したことを意味する。

10.被包

異物を吸収したり、肉芽組織で置換できないような場合に、周囲に生じた肉芽組織が異物を包囲し、線維性に包み込んでしまう状態。

 

11.炎症の分類

 

1)変質性炎

炎症の基本病変としての細胞・組織の変性や壊死が目立ち、滲出や増殖性変化が極めて弱い場合

2)滲出性炎

滲出物の性状による分類

(1)漿液性炎

血清成分とほぼ同じ成分の滲出物。細胞成分に乏しく、繊維素成分(フィブリノゲン)をほとんど含まない。淡黄色。透明。
組織損失を伴わないので、治癒後は痕跡を残さない。

〈例〉
  • 火傷でできたマメ
  • じんま疹
  • 胸膜炎
  • 心外膜炎
  • 腹膜炎
  • 関節炎
  • カタル性鼻炎

 

(2)線維素性炎

滲出物中に大量のフィブリンを含む。
漿膜(胸膜、心外膜、腹膜)や肺の炎症で起こる

ex)

  • 上気道ジフテリア(偽膜性炎)
    上気道粘膜が壊死に陥り、そこへフィブリン(線維素)が析出する。
    1つになり膜状の偽膜を形成し、それにより局所は白色の膜状物で覆われる。
  • 心外膜
    リウマチや尿毒症などにより、フィブリンが心嚢の内面や心臓の表面に付着するもの。
    「絨毛心」:糸くず状のざらざらした面を形成。聴診器に擦れ合う雑音を聞くことが出来る。
  • 大葉性肺炎(グループ肺炎)
    肺炎双球菌感染によって、病原体が肺胞腔内に充満し、それが肺胞孔を通じて隣接する肺胞に広がり一葉を占める。
    肉様変化が起こる場合がある。
    原因菌として「肺炎桿菌(クレブシエラ)」がある。

 

(3)化膿性炎(膿)

滲出物にチア量の好中球が出現する炎症。
帯黄色で濃厚、濁っている。変性壊死を伴った好中球と組織片を含む

  • 膿瘍
  • 蜂巣炎
  • 蓄膿
    ・副鼻腔炎
    ・膿胸
    ・子宮膿腫

 

(4)出血性炎

滲出物中に赤血球が混じっている。

ex)

  • インフルエンザ肺炎
    肺胞内に強い出血を起こす
  • 劇症肝炎
    肝臓全体の壊死と出血を呈する

 

(5)腐敗性炎(壊疸(えそ)性炎)

腐敗菌との混合感染がおきた場合による。
悪臭を伴い、汚い灰白、緑黒色の壊死組織での構成

 

3)増殖性炎

4)特異性炎

 

14.類上皮細胞

上皮細胞に類似した活性化マクロファージ

15.サルコイドーシス

原因不明で多くの臓器に発症する疾患
結核によく似た病巣
症状:目のかすみ、視力低下、咳、皮膚の発疹、不整脈など