病理学概論

病理学概論 第5章 退行性病変

 

1.萎縮

一度完成した組織や臓器がなんらかの原因で細胞の容積が小さくなること

原因は、
・構成する細胞の減少
・構成する細胞成分おのおの容量が小さくなる

1)数的減少

細胞の再生増殖で十分補充が出来ない場合、絶対数が減少し組織は萎縮に陥る


・肝硬変
・腎硬化症

2)細胞縮小

「骨格筋」「心臓」「肝臓」「腎臓」などの臓器において、「老化」「飢餓」「非活動状態」などで見られる。
細胞代謝が臓器成分の合成より分解に傾いているため(生理的萎縮)

褐色萎縮

細胞内に褐色色素「リポフスチン」が溜まって肉眼的には褐色に見える。

廃用萎縮
圧迫萎縮
神経性萎縮
内分泌萎縮

2.変性

1)変性の概念

代謝活動が阻害された結果、生理的な物質が過剰に細胞内に蓄積してくる状態。蓄積する物質は「非生理的物質」「水」「電解質」「脂質」「たんぱく質」

原因は特定物質の欠乏

ex)鬱血状態では肝臓で脂肪代謝に必要な酸素が不足している為、脂肪が蓄積する

 

2)変性の分類

(1)空胞変性or水溶変性(水腫変性)

ナトリウムポンプ作用で障害が起こることで、水とナトリウムが細胞内に蓄積し細胞は膨化する。この状態が高度になると細胞は壊死する。

(2)混濁腫脹

実質臓器(肝臓、腎臓、心臓)が感染や中毒症によって、小胞体の拡張やミトコンドリアの膨化が進み混濁して見える

(3)硝子滴変性

腎尿細管上皮や肝臓、副腎などにみられる。

(4)角化変性

皮膚においてなんらかの刺激で角化現象が盛んになると角質の増生が進行する。
一般的には「過角化症」と呼ばれる

(5)硝子様変性

間質の結合組織が無構造で均質化する病的過程。古くなると全ての瘢痕組織に硝子化が起こる

(6)アミロイド変性

毛細血管や小動静脈壁及び周囲の結合組織に沈着する。それによって実質細胞は圧迫萎縮に陥り臓器は機能障害を起こす。
腎臓や心臓では尿毒症や心不全の原因となる。

《アミロイドが沈着しやすい臓器》

  • 肝臓
  • 脾臓
  • 心臓
  • 腎臓
  • 膵臓
  • 血管

《アミロイド沈着のい関与する疾患》

  • アルツハイマー型認知症
  • 2型糖尿病
  • パーキンソン病
  • 伝達性海面状脳症(狂牛病)
  • ハンチントン病
  • 関節リウマチ
  • 動脈硬化症
  • 褐色細胞腫
  • 骨髄炎
  • 多発性骨髄炎
  • 不整脈
(7)脂肪変性

脂肪代謝異常のために脂質が生理的に存在する部位でも、過剰に沈着したり異常部位に出現する状態

(8)色素変性

血色素(ヘモグロビン)系、メラニン系、視色素などが、代謝異常によって色素沈着があらわれる。

 

 3)加齢と老化

《老化によって変化を起こしやすいもの》

  • アルブミン
  • 赤血球
  • ヘマトクリット
  • ヘモグロビン
  • 血圧
  • 運動機能
  • 視力
  • 眼底所見
  • 聴力
  • 心電図
  • 脳波異常
  • PSP排泄試験(腎臓(尿細管)の機能を調べる試験)
  • 筋力

《老化によって変化をうけないもの》

  • ナトリウム
  • カリウム
  • カルシウム
  • マグネシウム
  • 塩素

4)生活習慣病

(1)胆石症

妊娠経験のある肥満の中年女性に多い。
コレステロール結石、ビリルビン結石、炭酸カルシウム結石に分類される。
他に尿路結石、唾石、膵石、糞石

(2)糖尿病
(3)痛風
(4)動脈硬化

3.壊死と死

1)壊死

2)死

3)アポトーシス